第4話 少女と高速

あれから2ヶ月近くが経とうとしていた頃、俺はいつも通りタクシーで営業を終わらせ、車を積載車に積み、そのままとある所に来ていた。

「よぉ、元気そうだな」

「おかげさまでな」

そいつは笑いながら返してきた。俺と同時期に大阪に来て商売をしているこいつはどうやら前より大きい工場になっていた。

「しかし、大阪に来たからっていってこれはやばいな…」

「私も驚いたよ!まさかここまで大きな工場を手に入れる事が出来るなんて」

広さでいえばよくある田舎のコンビニぐらいの敷地がある。

「どこでこんな物件手に入れる事ができるんだよぉ、教えてくれよ。俺今住んでる家より良い物件探せそうだよ」

「残念、業者専用だから無理だよぉ!ま、教えるぐらいはいいけど(笑)」

「クッソー、業者専用かよぉ…」

そんな会話をしていると、

「工場長、何してるんですか?あと、そのお客さんは?」

そいつと背は同じぐらいだろうか、白色の上の女の子が来た。目は赤色でかなり顔のも良い。俺がそんな事を考えていると、にとりが

「あぁ、この人は私の知り合い。チューニングの依頼しに来たんだよ」

「にとりお前いつの間に従業員雇ったのか、ここに来てから絶好調やな」

そう、俺が来ていたのはにとりの工場だ。だけど、ひとくくりに工場ってだけで実際は車のオーダーメイドパーツ製造と車検や中古車販売、チューニングを請け負う工場だ。

「はじめまして、私、美玲みれいとと申します。何卒、よろしくお願いします」

「俺はこいつの知り合いの矢守だ、よろしく」

お互い自己紹介をしたあと、俺はにとりに依頼したい内容を話した。

「ちなみに話ずれたけどさっきの件なんだけど…」

「あぁ、いいよ。チューニングだろ?」

わざわざにとりの工場に訪れたのはにとりにチューニングを依頼させる為だった。

「しかし、いいのか?お前"アレ"営業ようなんだろ?」

「大丈夫だ!社長には許可は取った!」

俺は今乗ってる車達のチューニングの依頼の為に来た。

「ちなみにお前が不安そうにしてるだけで、実際はうちの社員全員ノリノリだったよ(笑)心配しなくていいからお願い!」

「前から思ったけど……お前の会社よく潰れないな……」

「なんなら毎日黒字だよ。事故起こしても対策はしっかりしてるから」

「その事をタクシーだけじゃなくて、レースに参戦して使って欲しいよ」

にとりは苦笑いしながら答えた。

「んじゃ、"アレ"のチューニングお願いな。お金は会社から小切手で渡してやる」

「お金はいいけど、お前仕事は大丈夫なんか?」

にとりは心配そうに聞いてきたが俺は少し残念そうに答えた。

「毎日営業してたら、社長さんから休みしっかり取れって言われてね…少し長めの休みを無理矢理入れられたわ…」

「えぇ……」

「働き過ぎて社長さんから休み取れって言われるってどんだけ運転してるんだよ…」

まあ、中には睡眠時間3時間だけしかない日もあったからそりゃ止めるか…

「んじゃ、よろしくな!」

俺は積載車に乗り、にとりの工場をあとにした。

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「帰りましたね、あの人ずいぶんと凄い人ですね……」

私はにとり工場長に向け話しかけた。

「まぁな……いつにも増してやばかったけど…」

にとり工場長は苦笑いしながら答えた。どうやら、少しいつもと違ったらしい。にとり工場長は話題を変えるように私に話しかけてきた。

「そういえば、美玲みれいも休みを取らないの?」

「わたしは……」

そう、考えてなかったのだ…休みなんて事を…

「あいつと同じか(笑)まあ、ゆっくり決めてくれ。あいつの会社のように狂ったように働いてる訳じゃないし」

それはあの人がイカれてるだけでは……

 私は休みがあったとしても特に考えてなかった……ただ働けばいいとしか考えてなかったのだから。それに気づいたにとり工場長が言ってきた。

「んじゃ、この作業終わらせたら明日は休みにするから、少し付き合ってくれないか?」

「え?」

明日…休み…にするからこの後付き合って?……

「付いてきたくなかったら大丈夫だ、私にも息抜きの時間が欲しいからな」

「………」

私は悩んでいたがすぐにその決断は出た。

「…お願いします」

それを聞いたにとり工場長は笑顔になりながら答えた。

「分かった、さっさと終わらせよう」

私とにとり工場長はこの作業を終わらせる為、せっせと作業を終わらせた。

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俺は積載車を会社に戻した後社長に呼ばれた。

「とりあえず、今日から一週間休みだね。この後はどうするんだい?」

社長からそう言われると

「家でゆっくりするか、大阪高速とかを走ろうと思ってる所です。走ってるのが好きなんで」

「そうか…」

社長はそう言うと俺に近寄り、手を俺の方に置いた。

「今日もし走るなら、一台のZ4に会ってバトルを仕掛けられるかもしれないとだけ言っておく…」

「え?」

社長がそう言うと部屋を後にした。

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俺は一度家に帰り、自分のインプレッサに乗りこんだ。

そして、キーを刺し回した。

キュルルル ブォォォ!!

ボクサーエンジン特有のドロドロした低音を響かせながら俺は自分の家のガレージから出た。

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「工場長、本当に居るのですか?」

「あぁ、居るはずだが……」

私はにとり工場長の車に乗って高速道路を走っていた。

「あいつ…どこに居るんだ?」

工場長は誰かを探してるらしいが一向に現れない。

「どこかで止まるか、連絡を取ればいいじゃないですか?」

私は思った事を率直に話したがにとり工場長はというと

「いや、あいつはそうしなくても絶対に会える」

の一点張り。

高速に乗ってから40分近くが経とうとしていた時、後ろから物凄いエンジン音が聞こえてきた。

「ん?後ろから凄いのが来るな」

私は後ろを見るとそこには水色の外車が迫ってきてた。

「BMW Z4か…」

「BMW Z4?」

私が聞き返すとにとり工場長はそう言うとその車について話し始めた。

「直列6気筒で最高馬力340ps、最大トルク49キロある7速DCTの車だが、あの車チューニングされてるからな……おそらく700馬力ぐらいはあるな…」

解説を聞いてる間に右側から追い抜き、走り去ろうとしていた。

 すると、乗っている車がみるみる速度を上げ、前の車を追いかけ始めた。

「工場長!?何してるんですか!?」

私は驚きのあまり大声で叫びながら聞いてみると、

「いや、多分あれ追っかけてたら会えると思って」

え?

「そんな理由ですかァァァ!!!???」

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チューニングソウルZERO〜SOUL RESTART ENGINE〜 矢守龍 @Yamori_Ryu118

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