第7話 内政構想?

「まさか、こんなにも上手くいくとは……」


ニヤニヤ幼女爆誕。

この幼女、この港町、レフ街と呼ばれる場所にくる前は教会の鑑定では詳しくわからないだろうと言っていた気がするが……今回はなんと勇者認定を受けたのだ。


帆船を見たり少し和食っぽい魚料理を食べたり……この街の代官ポッチ(ポッチ家とかいう可愛い感じの名前で弱小貴族らしい)の歓待を受けていた時はまぁそれはそれはとりあえず煽てて、幼女はさっさと黙って学べみたいな空気だったのだ。


まぁ饗されるだけさすが辺境伯令嬢と思ってたのだが。


「勇者のネーミングバリューの高さよね。過去のループではこうも上手くいかなかったと……私のおかげかしら」


少し冗談めいて言う。

私はまだ何もしていない。ただ幼女に憑いているだけの幽霊だ。


「はい、あなたのおかげです!」


にこりと笑う幼女。

幼女は笑顔が1番ね。

たとえ中身がループしてて正気が減ってそうな人であっても。


司祭による鑑定によって繰り返しの勇者と判明。勇者認定されたレイナに街の人は従うようになった。


レイナ曰く、以前までのループでは代官のポッチ以外はロクに話を聞いてもらえなかったとか。


たしかに街に着いた時は暖かい空気ではあったもののレイナの指示に従うような雰囲気はなかった。たとえ貴族であろうと5歳児に心から従おうなんて考える人はいないわよね。


ただそれが勇者となれば話は変わってくるそうな。過去の勇者の偉業のおかげね。


教会本部や対巨同盟、そもそもレイナの父親である辺境伯やストラク王がこれから何と言うかが心配ではあるが、現時点でこの街におけるレイナの発言力は鰻登りだった。


ちなみに魔動人があっても中世風ファンタジーのような世界である。大鷲を使った連絡網があろうが教会本部や対巨同盟の動きがこの街に来るのは数ヶ月はかかるだろうというのが目の前の幼女の話である。

情報の遅さも巨人に負ける原因の一つなのだろう。


「なら、さっさとやることをやるべきね。転生テンプレの内政のお時間って事」


「テンプレですか。まぁよくわかりませんが、はい。これから力をつけていかねばなりません。あと十年もすればストタル王国にも巨人が来て敗北しますからね……北方から飛行戦艦の一隻でももらえたら良いのですが。今時分、まだ試験艦の建造が始まったぐらいでしょうから」


対巨同盟とやらに提出した対巨人構想なるものは街に着いてすぐにレイナは一夜で書いていた。手書きではあるが魔法も使っていた。無駄な魔法能力の使い方のように感じたがここにはパソコンはないものね。

本来であればこの構想が上層部に届いた時点で彼女の発言力は確かに高まり、そこから彼女は動き出すらしかった。


彼女が書いた構想はループを繰り返した結果知り得た巨人に対する有効な戦術やこれからの対巨同盟が行うべき戦略について記されたものだった。


今までの情報からの推測という形で書くしかなかったがいずれ認められることだろう。


まぁそれを見ながら私も色々アイデアが出てきた。幼女のくせに対巨人に対する戦術を私にもわかりやすく書いていてループ存在は伊達じゃないと思った。

見た目幼女中身軍人って感じはちょっと怖くなったわね。


「はぁ、そういえば、あなたはその飛行戦艦とやらの艦長もしていたと言っていたわね。それで国連軍?とやらを率いていたとか…? あ、言いづらかったら聞かないわよ。過酷な道のりだったのでしょうから」


ここに至って私は彼女のことを聞くことにした。気にはなっていたけれど会ってすぐには聞けないことよね。と言ってもまだ1日と少しぐらいしか経ってないけど……


「いえ、話します。前回はとても順調でした。国が無くなった後、対巨人構想によって名声を高めていた私は北方の島国へ逃れることができました。海を挟んだ島国に大地に生きる巨人はやって来れません。あそこほとんど安全な島国と思われていました。ラーシアの世界では私達のいる大陸から見て北西の諸島とその北方の島国が唯一巨人に攻められることのない安全地帯だと思っていたのです。まぁ結局は安全ではないのですが……大陸が失陥すれば人類文明は滅びます」


話が逸れましたと彼女は話を元に戻す。

島国にいても人がバタバタと倒れだすというのは以前聞いたしね……。


気になるところだが今は彼女のことだった。


「そして経験を買われて飛行決戦艦『ラグナロク』の艦長になり奴らの地下都市に強襲をかけたのです」


ラグナロクには大砲やシールドに装甲に魔動人を詰め込む空母機能まであったそうな。

厳つい名前なだけはあるわね。

急にSFチックな代物が登場したけれど魔動人があるのだから今更ね。それにここがどこかのゲーム世界なのだとしたら終盤に超兵器が出てくるのはお約束よねと私は思った。


量産の暁には巨人など……と思ったけれどなんでも遺跡から発掘されたものを使ってて量産はできなかったんだとか。


他にもレイナは色々教えてくれた。

遺跡、人類は過去にも巨人に文明を滅ぼされているそうな。過去の文明の遺跡が北方の島国には残っていると……。


まだ1日と少しぐらいしか経っていないのだから知らないことだらけだ。


「さて、勇者と認められたことでこれから数ヶ月は領内で好き勝手にやれます。前回とは既に遥かに違います」


「言い方悪いわね」


「人類が巨人に勝つためにはなんでもやるしかないのです! 勇者様にも案を出していただきます」


気合いのこもった幼女に絆されて私は思いついたことを話した。


「鉄道の敷設、工場型手作業、確かマニファクチュアかしらん……の導入に、あっ、規格統一は必須よね。それに飛行機とは言わずに気球ぐらいは欲しいし。そもそも、道路開発、というかあれよ、不出来なパーツを流用した簡易魔動人による土木作業とか、港町なんだし帆船の改良でしょ、魔法なら簡単にできそうなウォータージェット推進とか……今もどうせ帆に魔法で風当てたりして進んでるんでしょ。というかそもそも帆船は空母とか輸送船とか生産能力を持った鉄の箱……海上フロートとかで生産力をあげないと、あれよあれ、鉄生産量の増大よ。鉄工所の建設よね……さらにそもそも家電を作りましょうよ。魔法があるくせに、洗濯機や扇風機一つないとか……まぁ自前で魔法を使えるだろう貴族にはいらなかったんでしょうけど……このぐらいのテンプレはあるわよね。後々は補給のカイゼンというか物流や情報網をアップグレードしないといけないわよね……。実現できるかは置いといて、どうかしら? うーん、もう流石にこのぐらいは各国でやってるのかしら」


対巨人構想には魔動人の有効な操作方法やら巨人に対する軍隊の動かし方、遅滞戦闘の方法については載っていたが、内政面では巨人に有効な武器の研究を各国は行って共同路線をとって国連軍を結成して指揮系統を統一して戦おう、みたいなふわっとしたことしかこの幼女は書いていなかったのだ。

ループ存在なら未来の技術チートをすればいいのにと私は思った。機関銃とか銃とか武器だけしか触れてなかったけど私は転生物を読んでいた厄介なオタクだ。このぐらいはすぐに思いついた。

誰でも思いつく簡単な物ばかりよね。


「は、はぁ?」


覚悟決まった幼女も私の厄介オタクの早口言葉には流石に戸惑っていた。


私は思いつきを忘れないようにまとめて言った。


今夜は1人反省会になりそうね。もっと良い言い方あったのかしら。

コミュ障の私はそう思った。


こんなうろ覚えの前世知識でなんとかなるかしらね……それに誰でも思いつくことばかり。


「勇者様、詳しく聞かせてください」


もう私はただの幽霊だ。魔法があるしなんとかなると私は気楽に考えた。


ここから辺境伯令嬢と2人ではじめての内政が始まった。

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ループ系ロボット物の主人公っぽい辺境伯令嬢幼女に憑依転生 @7576

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