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「皆さん、早速ですが今日は国立桜青学園の目的である優秀な人材を育成するために、皆さんの実力をチェックしていきたいと思います」

「試験と言うことでしょうか?」

「ええ、そうなります。とは言っても大体の力量は調べがついていますから、簡単に確認するだけになりますが」


試験か…それなら俺には関係ない。俺は万年Cクラスだ。いくら功績や成績を上げてもそれは変わりないことだろう。


「ご自分で分かっていらっしゃるかと存じますが、宮崎くんは試験を受ける必要がありません。理事長から大体の事情はお聞きしております」

「ではその話し方をやめてください。俺はこの学園の一生徒ですよ。試験のことは理事長より伺っております」

「それは申し訳…いえ、すみません。ではそのようにお願いします」

「はい」


こちらに視線が集まっている。俺は平凡な生活高校生活を送りたいので一切目立ちたくはないんだが。


「先生!何故彼は試験を受けないのでしょうか?俺達は全員受けるのですよね?それとも彼は試験を受けなくても実力の程が知れていると言うことですか?」

「口を慎みなさい。彼のことに関しては守秘義務があります。これは理事長からのご命令です」

「……そうですか」


当然、落ちこぼれと言われる者が集まるこのクラスで自分の実力を知られるような試験を受けたいと思わないだろうな。俺だけ試験がないと聞いてとても不満そうにしている。


理事長の命令となればこれ以上先生に聞くことは出来ないが、俺に直接聞いてくる人はいるだろう。


「では説明します。内容は筆記試験、身体能力測定、魔法実技試験、ランクチェックです」

「筆記試験はどの程度の問題になりますか?」

「高校三年生の問題までになります。今回の試験で低い点を取っても退学処分はありませんが、得点によってはクラス替えもあり得ますので頑張って下さい」


早速クラス替えのチャンスになるのか。Cクラスにとってはこれ以上下がることはないためラッキーなことだろう。他のクラスーーー特にBクラスは気が気ではないと思うがな。


成績によってはAクラスに上がる可能性もCクラスに下がる可能性もあるんだ。入学早々クラス落ちなどと言うことが起こらないと良いな。


「では休憩に入ります。この時間に最初の試験である筆記試験の準備をしておいて下さい。では」


さて、俺はどうしようか。先生の話だと今日一日俺は授業がないことになる。それは暇だな。


「ねぇ伊吹くん。先生が言っていたのは一体どう言うことなんだい?」

「俺も聞きたいな。お前、なんで試験を受けないんだ?」

「お前は誰だ?」

「俺は山田拓海だ。証明石はブロンズ。お前は?」

「俺は宮崎伊吹。証明石はグリーンだな」


途端に嘲るような顔になった。自分より下だと分かったからだろうな。人の実力と言うのは証明石だけで分かるものではないと思うが。実力を隠す人だっているだろうし。


「ハッ、お前はその程度なのか。色なしよりはマシだがどっちも変わらないだろ。それでなんでだ?俺の方が権力を持っている。これは命令だ、教えろ」

「乱暴は駄目だと言われたはずだが?」

「バレなければ問題ない」

「山田くん。やめて、伊吹くんは君に何もしていないだろう」

「うるせぇ。部外者は黙ってろ」


いや、部外者てはないだろう。同じクラスなのだから。それに一般人が下の方とはいえ一ノ宮の分家にそのような態度は駄目だろ。京也は不敬罪で訴えられるんだぞ?


「でも!」

「いい、京也。俺は大丈夫だ」

「…分かった」

「強がっていられるのも今のうちだぜ?まあこれから俺の手下になるって言うなら今日のところは許してやる。それが嫌ならさっさと話せ」


手下って、何を目指しているんだ?俺より上と言っても一つしか変わらないし大した差でもないだろうが。


「穏やかではないな。人間、知らない方が良いこともあるぞ?」

「これはその"知らない方が良いこと"に入らねぇだろ。俺の勘がそう言ってる」

「それなら残念ながら大ハズレだな。これはお前の知って良いことではない。身を滅ぼしたくなければ俺の事情を探らないことだな」

「っ!」


後半は魔法を使って威圧しながら伝えた。そもそも、理事長が守秘義務だと言っていることを聞いて、何も起こらないはずがないだろ。

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平凡男子のはずですが、訳あってエリート学園に入学しました 山咲莉亜 @Ria-Yamasaki

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