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連絡先はさっき交換した。スマホの持ち込みは自由だし、交換しておいた方が何かと便利だろう。


「……一人きりと言うのは珍しいことだな。だからと言ってアレは無くならないが…」


今日は宿題もないので荷物をおいて部屋着に着替え、実家から持ち込んだテレビを付ける。次に実家に帰るのは夏休みになるかな。


『へえ、そうなんですね。やっぱり同じ高校が宜しかったのですか?』

『はい。伊吹とは友人ですからね』

『まあ仕方ないことだな。諦めろ、翔』


テレビに映っていたのは七家の一つ、五条と七瀬の次期当主の五条遥人と七瀬翔だった。彼らはファッションモデルでもあり、ユニットを組んでいる。


七家の次期当主達は全員友人だそうだ。七瀬翔は一ノ宮の次期当主と同い年なので同じ高校に通いたかったと話している。一ノ宮伊吹はどこの高校に通っているのか明かされていないが、一ノ宮以外の次期当主はそれぞれ第二~第七の桜青学園に通っているらしい。


これを考えると一ノ宮伊吹は第一学園に通っていることになるが、生憎とこの学園にはいない。いるならもっと騒がれているだろうからな。


特に面白いとも思わなかったので直ぐにテレビを切って、アレを片付けることにした。午後からの入学式でもう大分暗くなり始めているがまだ眠くなる時間ではない。


「失礼致します。ーーーーー」

「はぁ……分かった。俺はしばらく戻れないがやるべきことはやるのでご心配なさらずと伝えておいてくれ」

「御意」



入学から一週間後。登校の時間になり、真新しい制服を身に付けて靴を履く。


「…なんで京也がここにいるんだ?」

「おはよう伊吹くん。良い朝だね」

「おはよう。で、何でここにいるんだ?」

「ただ一緒に登校しようと思っただけだよ」


部屋のドアを開けて外に出ると京也が待ち伏せていた。ドアの外に人の気配があることには気が付いていたが京也だったとは…


「それなら連絡してくれ。いきなり待ち伏せされていたら驚く」

「ごめんね。でも驚いているようには見えなかったよ?」

「ただ感情が顔に出ないだけだ」

「冷たそうだと言われない?」

「よく言われるな。他には表情筋が死んでいるのか、鉄壁面だ、とか」


案外ハッキリ言う性格らしい。穏やかそうだと言う印象は早々に撤回しなければならないな。


「それにしても入学早々、ずいぶんと人気者だな」

「はは…特に話したことがあるわけでもないんだけどね」

「人気者は大変だな」

「よく言われるよ。僕は別に人気者になりたいわけではなく、平凡な生活を送りたいだけ何だけどね」


苦笑しながらも手慣れた感じで周囲に手を振っている。本当に人気者は大変だな。しかもこれで男子達からは妬まれるのだろうから尚更だ。まあ俺には縁のないことだけどな。

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