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「以上、ここまでは大丈夫だと思います。次にこの学園についてです。まずこの学園は全寮制。討伐に行く人もいると思いますから外出制限はありませんが、学生らしく節度を守って行動すること」
「先生、一つ質問よろしいでしょうか」
自分の隣から声が上がったので思わずそちらを向くと、目が合ってニコリと微笑まれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます。外出制限はないとのことですが、事前に申請などは必要でしょうか?」
「いえ、必要ありません。長期休暇を除き、休日に外泊する場合は申請して頂きます」
「分かりました。ありがとうございます」
「はい。では続きを話しますね」
皆も気になっていたのか京也の言葉を聞いたクラスメイトの視線が先生に集中した。毎回申請がいるとなると面倒だとは思っていたが、それなら安心だな。
話の続きは校則や成績、クラスのことなどだった。学年はリストバンドの色、クラスはリストバンドのラインの色で分かる。
クラスが高いと多少の権力はあるが、乱暴は出来ない上に証明石の色の方が優先だそうだ。
今日はこれで解散、寮に戻って荷解きをしろとのことだ。
「伊吹くん、一緒に帰らない?」
「ああ。いいぞ」
京也はイケメンなので女子達が熱い視線を向けてきて、話したそうにしていたが関わることなく帰るらしい。前髪で目元が隠れているため地味で根暗な印象を受ける俺と一緒にいる理由が分からない。
単に隣の席だからか?俺でなくとも話し相手はたくさんいるだろうに。
「一つ聞いて良いかな?」
「なんだ?」
「もちろん、嫌なら答えなくて良いんだけどね。君の証明石は何色なのかな?あ、特に深い意味はないよ。気になっただけだから」
「ああ、俺はグリーンだ。ギリギリ色ありだな」
いずれ知られることだろうし隠す必要もない。俺なんかのランクを聞いてどうするのか知らないが。
「そうなんだね。僕は…」
「シルバー、だろう?本来なら余裕でAクラスだ」
「そ、そうだね。なんで君が知っているのかな?」
「いや別に?優秀なのは魔力の濃さで分かったからな。魔法はどのように使うんだ?」
驚きを隠せていない。初対面のはずの相手に一度で当てられたら仕方ないことかもしれないが。
「そっか。君はすごいんだね。僕はこのナイフに魔力を込めるんだ。やっぱりやり方としては定番だしね」
「そうか。ちなみにいらない情報かもしれないが俺は指を鳴らす」
君はすごいんだね、か。ただのお世辞か?これくらい誰にも出来ることだろう。それとも何か知って…?いやそれはない。それなら俺に……
「へぇ、珍しいね。武器を使わない理由でもあるのかな?まあこれは聞かないでおくよ。そう言えば話は変わるけど、もう数年後くらいには一ノ宮のご当主が代替わりされる予定だそうだよ」
「たしか名前は一ノ宮伊吹、だったか?」
俺と同じ名前だ。まあ名前が同じと言うだけであって、俺とは正反対の人だが。
「うん。僕は直接ご尊顔を拝謁出来るほどの立場はないけど、一ノ宮の全ての分家一族が集まる時に一度だけ遠くから見たことがあるよ。ハッキリと見える位置ではなかったけど色んな意味で存在感がすごかった」
色んな意味とは魔力量や権力のことだろうか。
「でもまあ、あのお方と直接お話することはもちろん、お会いする日が訪れることはないだろうね」
「そうか?案外近くにいたりするかもしれないぞ?」
「ふふ、そうかもしれないね。じゃあ僕はこれで。また明日!」
「ああ。また明日」
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