エピローグ
第10話 ずっと‥
「いいお天気でよかったね!」
「本当に!」
タイトな細身の白いウェディングドレスを着たルナと、ふわふわとボリューミーな白いウェディングドレスを着たアイ。
今日は、アイとルナ2人、2組の合同結婚式だ。
「まさか、高校の時の彼氏と、お互いに結婚するなんて、夢にも思わなかったわ。」
ルナはそう言って笑った。
「そう?アイは、なんかそんな気がしてたよ。ずっと。」
準備の終わった2人は、手を繋いで外の様子を見に行った。
2人と、互いの相手とその家族、そしておにいちゃんを招待したその会場は、森の中にあるこじんまりとした小さなチャペルだった。
「ねぇ知ってる?結婚式場の神父さんって、アルバイトの場合があるらしいよ。」
ルナは悪い顔をして告げた。
「えっ!そうなの!?じゃあ、あのサンタさんみたいな神父さんも、アルバイトなのかな?なんか、がっかり。」
「まぁいいじゃん、本物だったら、もっと費用がかかるかもしれないし」
アイも納得した様子で頷いた。
「ドレスがきつくて苦しいよぉ」
アイは大きく深呼吸して、森の新鮮な空気を身体に取り込む。
「すごいボリュームだもんね、そのドレス、重そう。」
ルナも鼻から息を吸い込んで森の木の香りを楽しんだ。
「おっ、ふたりとも、ドレス似合ってるなぁ!美人さんがお揃いだぞ〜」
外のベンチに座っていた昌樹がカメラを持って駆け寄ってきた。
「おにいちゃん!」
アイとルナは思わず昌樹に駆け寄って抱きついた。
「おいおい、旦那様がチャペルの中でお待ちかねだぞ。」
可愛い2人の花嫁に抱きつかれた昌樹は手のやり場もわからず、タジタジだ。
「おにいちゃん、私達、どうしてもおにいちゃんに伝えたいことがあるの。」
「ん?なんだ?」
2人は手を繋いで顔を見合わせた。
「せーの!」
—お父さん、今まで育ててくれて、ありがとう—
その瞬間、笑っていた昌樹の顔がしわくちゃになり、その目から大粒の涙が溢れだした。
「‥うぅ‥おにい‥お父さんは、本当に嬉しいよ‥」
涙を拭いながら、昌樹は声を絞り出した。
「パパ、こんなことで泣いてたらこの後大変だよ!バージンロードで、ちゃんと、私達の手、離せる?」
ルナは赤くなった目をこすりながらお父さんに聞いた。
「離せないよぉ〜‥。。。離したくないよぉ〜‥」
お父さんは子どものようにボロボロと泣いている。
「花嫁の手紙も、2人分あるんだからね!!ちなみに、書き出しは2人とも【お父さんへ】で始まってるから!今からそんな泣いてたら涙が枯れちゃうよ!!」
ルナは続ける。
アイは目をうるうるさせながらその光景を見守っていた。
お父さんは涙をこすりながら、笑顔を作った。
「そうだな!泣くのはまたあとに取っておくよ!さぁ、もうすぐ時間だ。戻るぞ。」
お父さんは2人の手をとってチャペルに戻った。
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「いよいよだな。」
式場の扉の前で、お父さんは、ネクタイを何度も直し、ふぅと息を吐いている。
「アイとルナを手離さないとならない日がくるなんて」
お父さんはまた泣きそうになる。
「近くに住むんだし、いつでも会えるじゃない。」
「そういう問題じゃないんだよ‥。いや、でも、おまえたちの目でしっかり見て選んだ旦那さんだ。間違いない。お父さんは、ユウトとカズヤにバトンを渡すんだ。」
お父さんの声に力が入った。
ドアが開く。
バージンロードで流す曲は、小さい頃からよくお父さんが聞いていたクラシックの「カノン」に決めていた。
小さい時のそれと同じように、アイとルナを片方づつの手で繋ぎ、音楽に合わせて一歩ずつゆっくりと歩く。お父さんは、鼻をすすりながら、顔を何度も上にあげる。
道の先には、白いタキシード姿のユウトとカズヤがいる。
お父さんは、その愛おしい2人の細い手を、ふたりの青年に笑顔でそっと託した。
END
〜Love & Luna〜 タカナシ トーヤ @takanashi108
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