第8話 神楽巫女
「ハァハァハァ……。危なかったわい。あの御守りから見ていた物の気配……。只者では無いようだな。まあ、喰らうのはもっと美味くなってからでもいいのぅ」
コツ……コツ………
暗闇の中から足音が近づいてくる。難を逃れたのではなく追われていたのだ。
「どこへゆくのじゃ?」
配達員の姿に戻った陰霊は背後を振り向かずにそのまま警戒を強める。
(霊媒師か。だが霊力もそんなに感じないから強くないな。ちょうどいいわ。今日の晩餐を邪魔された怨みを晴らすとしよう)
「ちょっと野暮用だわい。今日はまだ……何も喰らえてないわ!」
陰霊は背中からたくさんの触手のような口を出し、霊媒師に襲いかかる。しかし、攻撃を受ける前に一瞬にして霊媒師は陰霊の前に姿を現した。
「そんなに食べるとお腹壊してしまうぞ」
「何!?くっ!瞬間移動か?厄介な能力だのう」
「そんな便利なもの持っておらんぞ。妾はちと霊力の扱いに長けておるからな。高速で移動した後霊力を最低限に抑えて現れたことで瞬間移動したように見えただけじゃ」
陰霊はすぐさま距離を取り霊術を使う準備を始める。
「少しはやりおるのう。だがワシに出会ったのが運の尽きだな。【
再び大きな姿に変身し無敵の八牙が立ちはだかる。
「霊媒師を喰うのは久々だわい。光栄に思うがよい。ワシの力の糧となるのだからな」
「そんなに腹が空いてるのなら、沢山食わせてやろう」
【
霊媒師が指を鳴らすと背後にはカラフルな光の弾が無数に現れる。様々な彩りを飾る銀河団のような弾は陰霊に向かって一斉に流れ出す。
しかし、その全ての弾を八つの牙で喰らい尽くした。
「威力の低い攻撃をいくらしようが無駄だわ。お前さんにもいい事を教えてやろう。喰らった攻撃は自身の霊力に変換され、ワシの力は漲るだけだぞ」
「だから言っておろう。たらふく食わせてやると」
霊媒師は右手を宙に翳すと先の倍以上の光の弾が展開される。暗闇に光る星々のように終わりのない光線が陰霊を襲う。
「ぐっ!それほどの霊力……。まさか、あの時ワシを見ていた者か!?」
「今頃気づいたのか?じゃがもう遅い。ほれ!おかわりじゃ」
さらに勢いが増し、猛攻撃を喰らい続けた陰霊は怯む。
「ぐっ……。調子に乗るでないぞ!喰らった攻撃を全てワシの霊力に変換すればお主など……」
「何を申す?ディナーにはデザートが付き物じゃろうて」
「え?」
【
漆黒のエネルギーが両手の空間に集中し野球ボール程の大きさに膨れ上がる。凝縮された霊力に陰霊は身を震わせる。
「舐めるでない!ワシの牙で無効化してくれる!」
迫り来るエネルギーの塊を一つの口で勢い良く喰らいつく。しかし何も起こらずエネルギーを取り込むことが出来、陰霊は勝ち誇った様子で嘲笑う。
「ふっ……。残念だったわい。化け物じみたその霊力も、今ならワシの方が勝る。お主とワシでは相性が悪かったようだな」
状況とは裏腹に霊媒師は不思議そうな顔で見つめる。
「そうか。ウヌは己の限界を知らぬのじゃな」
「限界だと?」
「ウヌの霊術は確かに強力じゃが吸収できる霊力にも上限がのるのじゃ。とはいえ、そこまで霊力を持った霊媒師など妾くらいしか居らぬから把握出来ないのも詮方ない」
「なぜそんなことを知っている?」
「目がいいからじゃ!」
「答えになっておらん。だが限界を迎える前にワシの霊力に変換すれ……」
____バキバキッ!
身体中から血が吹き出し、亀裂が走る。許容霊力を超えた代償として身体の崩壊が始まったのだ。
「ぐぁぁぁ!ワシの身体が……崩れてゆく!まだお主も喰らえてないというのに!!これ程霊力を持った女の霊媒師……喰うてみたいわ。あの陽霊のお嬢さんも……どんな味か……気にな……るわい」
「ウヌは食べ過ぎたのじゃ。地獄で反省しておれ。それに……妾を喰うことは無理じゃ」
陰霊はあっという間に崩れ落ち跡形もなく消えていった。本来は徐々に身体の崩壊が始まるが霊力が凝縮さた、通常の5倍の威力を持つ
「さーて。帰ったら八つ橋でも食べるのじゃ〜」
気分屋で能天気な彼女こそ京都霊媒師教会四代柱の一人、神楽巫女。並外れた霊力と宇宙に関する霊術を使用する霊媒師である。
心霊現象 いろは @iroha_0306
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