君は僕の

@seikaisei

第1話 ある日

「あー、俺死んだんだなぁ。」

そう思うのはピクリとも動かない身体が床にあるのを、空中で見下ろしているからだ。


「このまま成仏するのかー。まぁ悪い人生ではなかったか。」

家庭環境はよくなかったものの友人には恵まれ、最後は人のために死ねたんだから来世に期待してもいいよな。

そう思い、このまま消えるのを待っていた。


「…ん?どのタイミングで消えるんだこれ。」


半日待っていたものの消えるどころか、意識がどんどんはっきりしてきた。


もしかして消えないのでは?

彷徨う亡霊になるってこと??


当然周りの人には見えていない。

どんなに目立とうとも気づいてすらもらえない。

街で歩いている人の前に立っても、女子高校生のスカートをのぞこうとしても。



このままここに居ても仕方がない。

知っている人の元にでも行こう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


とりあえず自宅まで戻ってきた。

「あ…。」


僕の彼女である姫咲さんが警察から状況を聞いているようだ。

「残念ながら、彼氏様は人を助けるときにワンダー症状を発病し、そのまま………。」

「…ハッ…ハッ……嫌ぁああああ!!」

過呼吸と共に大声出しながら泣き叫ぶ彼女…。


彼女がこんなにも大声が出せたのか。そんなにも大事に思ってくれていたのか。

警察らも戸惑いながら、しばらくすると資料を渡した後に場を去った。


雪が降り始めた。

ずっと玄関前で泣いたせいか、彼女の手は見るからに赤くなり、泣きすぎて目が腫れている。

その姿に僕は死んでも悔いが無いという考えがどれほど浅はかなものだったのか…。


あぁ…もう一度君と話がしたいな…

もう一度他愛の無い話で笑いたいな…


霊体になっても涙が出るとは知らず、私は大粒の涙を流し始めた。


幸福なのか不幸なのか、その涙が彼女の頭上に落ちた。


「……ゴウくん?」

え?


彼女は濡れていない頭を触りながらこう言った。


「待ってて。もう一度やり直すから。」

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