打ち合わせ中に二回もトイレに行きたくなる23歳
こじらせた処女/ハヅ
第1話
「すみません、トイレ行ってきて良いですか…?」
「始まる前に済ませときなよ」
「すみませんっ!!」
許可を得る事はできたけど、隣の先輩に耳打ちで注意されてしまった。
打ち合わせ中、強い尿意にどうしても我慢できなくなった俺は、開始20分もしないうちに、中座することとなってしまった。打ち合わせ中に眠くなる事を恐れて、普段あまり飲まないコーヒーを飲んだのは原因。眠気はどうにかなったけれど、そのせいで生理現象に影響を与えてしまった。
「すみません…」
ドアをそーっと開けて、小声ですみませんと言いつつ席に戻ると、すでに資料が置かれていて、次のイベントについての説明が始まってしまっていたため、急いで資料を読み始めた。
(なんか…またトイレ行きたくなってきた…)
あれからさらに30分。お腹に違和感を感じて座り直すと、きゅんと嫌に下腹部の張りを感じた。
(さっき行ったばっかだしな…まぁ流石に大丈夫だろ…)
流石にこの短時間で2回も抜けるのは社会人としてどうかと思ってしまって、戸惑う。足を開いたり、閉じたり。足の付け根を無意識に擦り合わせてしまって、どうしてもお尻がもぞもぞと動いてしまう。
(200mlのやつ、1缶しか飲んでないのになぁ…あ、でも昼飯の時、お茶飲んだ…それでも普段は行きたくなっても我慢できるのに…)
会議に集中しよう、そう思うのに、じわりじわりと高まっていくソレが気になって、どんどん頭の中がおしっこに侵食されていく。
「このキャパだともう少し値段を上げないと…」
「しかしそれだと…」
会議は白熱していて、さっきよりも言いにくい。もうすぐ一時間が経とうとしている。紙コップのコーヒーは、俺の分だけ満タンだ。他の人は半分以上がなくなっている。何でこれを飲んでおしっこに行きたくならないんだろう。
(誰かトイレ行こうとしたら、俺も…)
資料の文字が頭に入らない。足を開く余裕がない。ぴっちりと太ももを閉じ合わせて、左手で太ももの外をさすってやり過ごす。
下腹が痛いほどに張り詰めて、出口が痙攣するかのように時たまフルリと震える。
「っ、」
(おなか、いたい…おしっこ、おしっこっ、おしっこおしっこ、)
なだめるように下腹部をさすると、びっくりするほどぱんぱんで、固い。
(なんで…さっき行ったのにこんなに溜まってんの…)
人差し指で性器を引っ掛ける様にして、出口をグリグリと刺激する。
「っぁ、っはぁ、」
(はやくはやくはやくぅ…)
もう会話内容なんて頭に入ってこなかった。1番下っ端であまり発言しなくて良い立場なのが幸い。背中からつぅ…と汗が垂れる。
「すみません、お手洗い行ってきますね」
フッと意識を戻される。発言したのは斜め前に座っていた女の人だった。
「あ、おれも…」
「あ、あと5分で終わるからちょっと待ってー」
「はーい」
腰を上げようとした時。進行をつとめていた人が止めに入る。
(そんな…限界なのにっ、)
じゅぅぅ…
「っ!!」
持っていた紙がくしゃりと折れる。慌てて性器を引っ掛けてた手でソコをぎゅうううと押さえた。
(やばいっ、まってまってまって、)
両手で全力で体重をかけて、ギシギシと椅子を揺らす。
「っは、っ、」
暑くもないのに嫌な汗が額を流れる。
さっきトイレに行くと言った女の人は、ケロリとした顔で話を聞いている。もう、今すぐにでも駆け込まないと間に合わない。でも、あと5分。たった5分も我慢できないのかって思われたくない。
太ももをよじる余裕もなく、石みたいに固まって、ソコを揉みしだいた。
じゅわ、じゅわ…
シミが少しずつ、大きくなってる。手の湿りは汗なのか、それとも。
(おしっこおしっこおしっこおしっこおしっこおしっこおしっこおしっこ)
じゅううう…
「ぁっ、」
ぱた、と音が鳴った。恐る恐る下を見ると、ビニール椅子の上に小さな水溜りができている。
おちびりを超えた瞬間だった。
固いスーツの生地を突き破って、じわぁ…と少しずつ、少しずつ水溜りが大きくなっていく。
「っ!!」
このままじゃ、バレる。この液体が椅子のパイプを伝った時、地面に水溜りをつくった時。
スーツのポケットに入っていたハンカチを取り出して、股間に押さえつける。もう、出るのを止めるための括約筋は疲弊しきって使い物にならなかった。
「っはぅ、っふ、」
今、考えるのはお漏らしをしないことではない。この小さなハンカチに、おしっこをおさめて、バレないようにすること。
時計の秒針がゆっくり、ゆっくりと動く。
ぎゅうううう、と布を出口に当て、痛いぐらいに親指で弄り回す。
「では次回は…」
じゅうぅ…じゅぅぅ…
びっしょりと濡れた手。押さえるたびにぐじゅ、と怪しい音がなる。
(も、限界…でるっ、、)
「以上で終わります。ありがとうございました」
ありがとうございました、がバラバラと聞こえ、ハッとする。
(終わった、おしっこができる、やっと、ぁ…)
立てない。今、どこかを動かしたら確実に、出る。
次々と人が出口に向かって出て行くのをぼんやりと眺めながら、でも、頭はおしっこに支配されながら、ぐしょぐしょのズボンを揉むことをやめられない。
「おい、終わったぞ。戻らねえの?」
隣の先輩が肩を叩いた瞬間だった。
「ぁ、、」
どこかが緩んだのがはっきりとわかった。ヒクヒクと不確かに蓋していた出口が全開になる感覚。トイレに向かって叩きつける瞬間の感覚。
「ん?おーい、気分でも悪い?」
じゅわぁああああ…
ハンカチを抜けて、椅子いっぱいに広がった生暖かいソレは、パイプ部分を伝って、新たな水溜りを作る。
「ぁ、ぁ、あぁぁぁ…」
白くなるまで握った手が震える。ぴっちりと閉じた太ももを重ね合わせるけどもう遅い。勢いのあまりすぎた水流は、堰き止められる事なく物凄い勢いで放出されていく。
(まにあわなかった、せんぱい、みてんのに、あとちょっとだったのにっ、とまんない…)
「はぅ…」
ぴちゃ…
大きく全身が震えた。これが、おしっこ終わりの合図。全身の力が抜けて、足は若干震えている。
足元には俺の作った大きな水溜り。
(おもらし、だ…)
萎んだお腹をさする。何で、我慢できなかったんだろう。子供じゃないのに。ここ、トイレじゃないのに。
「…もしかして、俺が注意したから行きにくかった?」
じわりと涙が滲む。
「体調、悪い?」
ゆるゆると首を横に降った。ただ、我慢できなかっただけ。びしょびしょのズボンの上に涙がぽたぽたと落ちて行く。
「…こーひー、のんだらっ、いつも、がま、できるっ、のに、」
声が震えてひっくり返る。次の言葉が出せない。
「…あー、お前いっつもお茶飲んでるもんな。カフェインきつかったかー」
ヒクヒクとしゃっくりが止まらない。
「ごめんな?前担当してた後輩がサボり魔でさ。しょっちゅう会議抜けてたからよく怒ってたんだよ。言い方きつかったかも。お前の性格だったらそんなんありえんのにな」
何度も何度も頭を撫でられて、謝られる。
「ごめ、なさい…ちゃんと、言えば、こんなしっぱいっ、」
「あーあー泣くな泣くな。着替え買ってきてやるから、」
「だれにも、いわない…?」
「言わない言わない!!吐いちゃったってみんなには言っとく。だから、な?あんまり気にすんなよ?」
「…はい…」
その後は何事もなかったかの様にオフィスに戻り、業務をこなして帰路に着いた。
(あ、コーヒー…)
あの日から3日たった今でも、コーヒーを見るたびに思い出して、穴に入りたくなるぐらい恥ずかしくなる。もうコーヒーなんか飲まない、そう誓った新卒一年目の春だった。
打ち合わせ中に二回もトイレに行きたくなる23歳 こじらせた処女/ハヅ @hadukoji
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