第45話 金なんて勝手に貯まっていくからな
ゼタの工房に戻ってきた俺は、早速、本題を切り出した。
「〈ミスリルの剣〉の他に、〈ミスリルの鎧〉も造ってほしいんだ。手に入れた十個の〈ミスリル鉱〉があれば可能だろう?」
「できないことはねぇが、倍の4000万になるぜ?」
「構わない。むしろ追加の作業を頼みたいから、もっと高くなるはずだ」
「追加だと?」
「ああ。こいつを鎧の方に使ってほしいんだ」
俺は〈死騎の鎧片〉を取り出し、ゼタに見せた。
「こここっ……こいつは『深淵穿孔』のボス、デスアーマーからしかドロップしねぇ、〈死騎の鎧片〉じゃねぇかッ!? 何でこんなもんをっ!? ま、まさかっ……」
「最下層でボスを倒してきたんだ」
「デスアーマーを倒しただと!?」
その場にひっくり返りそうになるほど驚くゼタ。
「ちょ、ちょっと待て!? さ、さすがにソロじゃねぇよな!?」
「もちろんソロだ」
「テメェのレベルは確かまだ50代じゃなかったか!?」
「ボスを倒して60を超えたぞ」
「レベル40以上も格上のボスを、ソロで撃破!? あ、あり得ねぇっ! テメェ本当に何の天職なんだよ!? いや、どんな天職だろうと、そんな真似は不可能なはずだ!」
絶対に無理だと断言するゼタだが、目の前には証拠のドロップアイテムがあるのだ。
それに気づいて、ぐぬぬぬぬ……とゼタが唸る。
「……俄かには信じられねぇが、こいつは間違いなく〈死騎の鎧片〉だ。これをミスリルに混ぜて鎧を作成すれば、防御性能が大幅にアップするだけじゃなく、特殊効果がつく……」
ゼタは神妙な顔で頷いた。
「いいだろう。〈ミスリルの剣〉に〈ミスリルの鎧〉、どちらも全力で作らせてもらうぜ。ちなみに〈ミスリルの剣〉用の鍛冶素材はねぇのか?」
「そうだな……特には……と、そうだ」
俺は〈アイテムボックス〉から〈血濡れのナイフ〉と〈暗闇のナイフ〉を取り出した。
「こいつらを使ってくれ」
「ほう、どちらも特殊効果つきの武器だな」
実は武器も鍛冶素材として使用することが可能なのだ。
特殊効果つきのものなら、それを新しい武器に付与することもできる。
「だが確率で失敗しちまう。そうなるとこの武器は無駄になるだけだが、いいのか?」
「ああ、構わない。特殊効果はありがたいが、すでに攻撃値が低すぎて使いどころがなくなっていたからな。上手く付与できればよし、できなければ仕方ない」
「了解だ。こいつはなかなか大仕事になりそうだぜ」
金額は4500万ゴルドということになった。
前払いで2000万ゴルドを渡し、残りは完成後だ。
……それまでに稼がなければな。
2800万ゴルドの支払いはもう少しかかりそうだし。
ちなみに職人の鍛冶スキルに応じて、メインの金属の他に使用できる素材の数が代わるらしい。
より多くの素材を利用できるほど、できあがった武具の性能が高くなりやすいのだ。
ゼタは俺が渡した素材以外にも使用するはずだが、4500万ゴルドはその素材込みの値段となっている。
そして数日後。
―――――――――
〈ミスリルの剣+3〉ミスリルで作られた片手剣。攻撃時、稀に『出血』『暗闇』を付与する。攻撃+85
〈ミスリルの鎧+5〉ミスリルで作られた鎧。『暗闇』『困惑』『絶命』への耐性。防御+95
―――――――――
「おおっ、最高の仕上がりだ!」
完成した武具を受け取った俺は、その性能に思わず歓声を上げた。
〈ミスリルの剣〉の基本攻撃値は+70。
そこから性能が上がるほど+が追加され、+1につき攻撃値が5上がる計算なのだが、+3となっている。
それだけでもすごいのだが、〈血濡れのナイフ〉と〈暗闇のナイフ〉の特殊効果である『出血』と『暗闇』が、なんと両方とも付与されているのだ。
一方〈ミスリルの鎧〉の基本防御値は+70。
こちらも剣と同様の計算で、+1につき防御値が5上がっていくのだが、驚異の+5で防御値が25も加算されている。
加えて『暗闇』『混乱』『絶命』という、三つの状態異常に対する耐性まで付与されていた。
「自分で言うのもなんだが、マジで良いものができたと思うぜ」
「ああ、間違いない。さすがだ」
この性能なら、レベル100、いや、レベル120くらいまでは使用できるだろう。
俺は残りの2500万ゴルドを支払った。
「確かに受け取ったぜ」
ちなみにこの残りの代金を稼ぐために、ここ数日、色々と苦労した。
前払いの2000万ゴルドを支払った時点で、手持ちがせいぜい500万ゴルドしかなかったためだ。
支払いの催促で約600万ゴルド、盗賊団の拠点を潰し回って約400万ゴルド、再び『深淵穿孔』に潜り中層あたりで高価なドロップアイテムを狙って約700万ゴルド、そして冒険者ギルドの高報酬依頼をクリアして約300万ゴルド。
そうしてなんとか2500万ゴルドを稼ぎ切ったのである。
残高は現在、5300ゴルド。
今晩の宿代も怪しいレベルだが、強力な装備を入手した今、もはや金のことなど考える必要はあまりない。
「ボス討伐と順番が逆になってしまったが、『深淵穿孔』の下層まで潜ってレベル上げといくか。下層の魔物のドロップアイテムを売っていけば、金なんて勝手に貯まっていくからな」
―――――
ここでいったん完結となります。お読みいただきありがとうございました。
神々に見捨てられし者、自力で最強へ 九頭七尾(くずしちお) @kuzushichio
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