自分の人生のガラス越しに猫がいる。

豆腐数

奴らは人の家の塀の上も歩く。

 「猫好きに刺さる小説・エッセイ」大募集!ねえ。カクヨム公式が出した猫の日にちなんだお題を見て、私は唸った。猫は好きだが、飼った事はない。ペット不可の物件ばっかりに住んでたし。


 大体アイツらは自意識過剰だと思う。子どもの頃住んでたマンションの一階の部屋の窓から、ペット不可なのにちょくちょくこちらを覗いていた、毛並みの良い猫もそうだった。こっちがそばを通ると、わざわざ首を動かしてジッとこっちを見るのだ。首以外は全く稼働せず、鳴きもせず。あの習性? がなんなんだお前ら、という気にさせられる。


 今住んでいる一軒家にも猫は勝手に上がり込んできて、マンションの猫と同じ仕草でジッとこっちを見る。なんなんだお前らは。猫だから大抵の事は許してやるけどな。なんなら見かけただけで可愛いからラッキーな気分になるけどな。


 最近あいつらは横暴さを増して、とうとう家の屋根まで歩き回るようになり、ベランダまで横断するようになりやがった。こないだなんかガラス越しに目が合ったから、わざわざ近寄って「よう!」って手を上げてあいさつしてやった。あんニャロー、ギョッとした顔でこっちを見てやがった。(猫って結構表情あるよね)。だが私は猫に甘い人間ではないから家には入れてやらない、わはは。猫の野郎、しばらく驚いたように固まっていたようだが、やがて私に恐れをなしてベランダから去っていきやがった。おう、また来いよ。


 猫は可愛い。キキの相棒も、のび太君の大親友も、サイボーグなクロちゃんも、仕事を選ばないキティさんも、ネコミミメイドの頼子さんも、みんなみんな等しく可愛い。


 私が直接猫を飼うことはないだろうが、この文章を書いている今も、そばににゃんこ先生とねむねこのぬいぐるみが転がっているし、窓の外ではニャーニャ―ニャオオーンと、赤ん坊の泣く声にも似た猫共の声が聴こえる。

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