美は足元にあり
羽間慧
美は足元にあり
つぶらな瞳、ふわふわな毛並み、ぷにぷにな肉球の触り心地。それだけが猫の魅力ではないのである。
猫の足跡ほど美しいものはない。
猫の肉球の構造から確認しよう。丸みを帯びた三角形の掌球の上に、卵型の指球が四つ存在する。そのほかの肉球として人間の親指に当たる狼爪と、手首にある主根球が挙げられる。しかし、どちらも地面につくことがない部分だ。爪をしまうことのできない犬では、こうもいかない。爪痕を残さない生き物ゆえに、なせる美がある。
猫の歩いた雪や砂地には、スタンプを押したかのような規則性が見受けられる。直線に近い足跡の並びは飽きさせることを知らない。足跡が続く限り、猫の向かった先を辿りたくなる。
惜しむことがあるとすれば、足跡が永遠に残らないことだ。無論、乾燥中のコンクリートに足をつけてくれさえすれば、話は別である。気ままな足が狙い通りの場所に触れてくれるかどうかは、猫のみぞ知る。
美は足元にあり 羽間慧 @hazamakei
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