〜進むに進めぬ道〜

「そろそろ、調査に向かうよ」

俺は食後の休憩の為に座っていたベンチから立ち上がり沙織ちゃんに向かってそういった。

沙織「う、うん、でも良いのかな?」

「時間が限られているから早く行こう」

沙織「わかった」

俺は沙織ちゃんに有無を言わさずに調査をする事にした。

俺たちは元々霜月が住んでいた自宅周辺で聞き込み調査をする事にした。

犯人は現場に帰ってくるというのは少し違う気がするがそれでも霜月が戻ってくるかもしれない。俺は常にここに居る訳では無いのでここに住んでいる人に聞くことに、そのための聞き込み調査だ。

「だいたい4、5人くらいに話を聞ければ十分かな。」

沙織「結構多いね」

「まぁ、2、3人より少し多いくらいが丁度いいからね」

そんな会話をしながら霜月が住んでいた住宅街に歩いて向かう。

住宅街を歩いている途中に主婦らしき人が歩いているのを発見した。

「彼女に話を聞いてみよう」

俺は沙織ちゃんにそう言いそのため主婦に近づく。

「すみません」

俺が声をかけると主婦は首を傾げながらなにか用かと聞き返してくる。

「実は最近ここに住んでいた。

霜月 蓮也さんが失踪されまして最近霜月さんを見たりしてませんか。」

端的に状況を説明する。

それに対して主婦は少し考えてから言葉を発した。

「えっとあなたは霜月さんとどういう関係で?」

もっともな意見を聞いてくる。

「俺は霜月さんの友人さんから霜月さんを探すように依頼されました。

探偵の蒼です」

無理に嘘をつくよりこの方がいいと判断して俺は大体のことを話した。

「探偵さん?それは大変ですね

でもすみません霜月さんは最近引っ越してしまって

どこに引っ越したのかまでは分かりません」

主婦さんはそう言うとこれ以上はなにも知らないのか申し訳なさそうに頭を下げた。

「いえいえ、こちらこそ突然すみません」

そんな感じで他に4人ほどに聞き回ったが特に変わった情報は無く。

霜月ももうここには戻っていないようだ。

...

沙織「結局、全然収穫なかったね」

道端に落ちている石ころを蹴りながら沙織ちゃんはそんなことを言う。

「まぁ、こんなもんだよ。探偵なんて

そもそもどこにいるか分からない人を探すのは難しいからね」

沙織ちゃんの言葉をそんな愚痴で返す。

沙織「もう5時か、そろそろ私帰らなきゃ」

そうか門限があるのか

「じゃあここで解散だね

明日はちゃんと学校に行くんだよ?」

俺がそんな注意を沙織ちゃんに言うと沙織ちゃんは足早にこの場を立ち去った。

「全く」

呆れ気味にそんな言葉を零しながら背中を見送る。

「さて、どうしようかな」

俺は駅に向かうためビル群の合間を歩いていた。

結局、探索範囲を広げると言っておいて今日居たのは昨日と同じ場所、時間をかけ過ぎているのかもしれないな。

でも数人と話して霜月さんは完全にこの街にはいないのかな。

いやでも仕事はやめた訳では無いならば近くに住んでいるはず。

俺は今ある情報からできるだけわかることを整理しておくことにする。

家を変えたのなら数駅分離れた場所にいる可能性もあるのかそれなら俺が住んでいる事務所近くも探索範囲に入れるべきか。

明日は少し離れた場所に行くことにしよう。

そう思い俯いていた頭をあげると突如として目の前に

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

探偵は忘れない 御槍 翠葉 @goyari_suiyou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ