第13話 揉め事

「ふぅ。今回の授業も大変なものでしたね」

「ああ、そうだな。魔法薬学は興味深い要素はとてつもなく多い科目だが、何分覚えるものが多すぎる。疲れるな」

「そうだね」


 四限目の授業が終わり、席が近いイリス、ヴォイドと会話を交わす。

 

 賢人武闘祭出場者決定戦から一週間。俺たちは座学・実技ともにいそしんでいる。


「あ、ダクネス。一緒に食堂行かない?」


 俺らが話をしていたところに、一人の女子生徒がやってきた。俺と協定を結んだリア・ベストリアだ。

 

 最近は放課後に格技場を借り約束通りマンツーマンで剣術の指導をしてやっている。俺の場合、闇魔法を扱うことが出来ても、他の魔法は一切使用することが出来ない。そのため、リアが使う雷魔法について教えてやることが出来ない。代わりに、父親に教えてもらった剣術については指導ができるため、リアには剣術の指導をしている。

 おかげでこうして仲を深めることが出来たわけだ。女の子の友達は何人いてもいいからな。うんうん。


「ああ。わかった」

「あの、私たちもついて行ってよろしいでしょうか?」

「俺は構わないが…」

「え、ええ。勿論いいわよ」


 リアは何故か不服そうな目を一瞬俺に向けたあと、そう答える。はて、何か良くない事をしたのだろうか。


 ともあれ、俺たちは四人で食堂へと向かった。


◇◆◇◆

 

「私はあれが食べたいわ」

 

 食堂に着いたリアが真っ先に指差した料理は、前世でいうハンバーガーみたいなもの。ただし、パティはハンバーグではなくオークと呼ばれる、豚の頭をした人型の魔物のステーキ肉を使用している。名前はオークサンドと言うらしい。この国では比較的名物品らしく、幅広い世代の人たちからおいしいと評判の様だ。まあ、俺は食べたことないが。

 

「ちょうどいい。俺も同じものを食べよう。一度も食べたことが無かったからな」

「えっ!?一度も食べたことないの!?」


 オークサンドを一度も食べたことが無い、という俺の発言に心底驚くリア。ちょっと失礼じゃないか?別に食べたことなくてもいいだろう。


「では、私も同じものを食べたいと思います。ヴォイドさんもよろしいですか?」

「ああ、ぼくは何でも構わないよ。みんなとおいしく昼食を取れればそれでいい」


 二人もオークサンドを食べるようだ。全員同じ意見なので、俺らはリアが指差した、オークサンドの売店に向かった。


 オークサンドはだいぶ人気なようで、二十人くらいの行列ができていた。この学園に通っているのがそもそも五十人くらいなのを考えると、約半数もの人間が並んでいるということになる。オークサンドの人気がよくわかる。


 俺たちはその列の最後尾に向かった。


「いったぁ」


 俺たちが最後尾に着いた直後、横から上級生の男子二人がいきなり割り込んで来てさらにリアにぶつかった。ぶつかったリアは反動で尻もちをついてしまった。だが、男たちは謝るそぶりすらない。そもそもリアのことを見てすらいなかった。


「ちょっと!あなたたち、何で割り込んでくるのよ!しかも人のことを転ばせておいて謝罪すらないわけ?」


 立ち上がったリアが割り込んできた男たちに早速嚙みつく。


「あぁ?」

「てめぇ、誰に向かってモノ言ってんだ?ゴラ」


 上級生二人は威圧感たっぷりな目でリアを睨みつけた。その威圧感に後ずさってしまいそうになったリアだが、グッとこらえてまたも言い返した。


「誰も何もあんたたちに言ってんのよ!勝手に割り込んできた上に人を転ばせておいて。最終的には謝罪もなしで上から目線?そういうのを逆切れっていうのよ!」


 よく言った!もっと言ってやれリア!

 俺は心の中でそう、リアを応援した。それに対して上級生は。


「てめぇ、そろそろぶち殺されたいのか?調子に乗るのもいい加減にしろよ!」

「そうだそうだ。学園に居られなくなってもいいのか?」


 …ひどい言いがかりをつけて来た。200%あいつらが悪いだろ、これは。


 騒ぎを聞きつけ、周囲に人だかりができ始めた。しかし、まだ先生たちが来る様子はない。誰かが今呼びに行っている途中なのか、はたまた最初から無視するつもりなのか。父親によればいじめは頻繁に起こっているらしいからな。案外これぐらいなら大したことないのかもしれない。


 それはともかく、いい加減とめないとガチで喧嘩が始まりそうだ。

 俺はそう思い、急いで仲裁に入った。


「まあまあ、お三方、そろそろ矛を収めま…」

「うるせぇ!ガキは黙っとけ!」


 …こいつらにはしつけが必要なようだなァ?


「では、決闘をして白黒つけたらどうですか?」


 横で見ていたイリスは俺の殺気に気づいたのだろう。突然そんな提案をしてきた。


「決闘だぁ?上等だ。一年がいっちょ前に決闘を持ち出してくるとは」

「ぼこぼこにしないと気が済まないようだからなぁ?」

「こっちこそ願ったり叶ったりよ」

「ああ、そうだなァ」


 流れで決闘をすることになったが、俺は頭の片隅でこう思った。


 これ、俺らじゃなくて完全に相手に非があるよね?

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完全実力主義の学校で俺は最強を目指す〜転生特典で最強の闇魔法を貰ったのでチョチョイと無双してきます〜 Booske @infurukun

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