第12話 決着

 イリスの圧倒的水魔法が繰り出されたレオンとの試合。レオンは一撃で意識を刈り取られ、場外負け。イリスの圧勝だった。


 その後も試合は続き、ついに決勝戦までのし上がってきた、ヴォイド対カール・マコイルの決勝戦となった。この試合、どちらが勝つかは正直に言って予想できない。


 ヴォイドはその圧倒的剣技を使い、次々とクラスメイト達を圧倒していった。また、相手の魔法により、ヴォイドの勝利が怪しくなった場面においてもヴォイドは持ち前の冷静さと詳細の見えてこない強力な魔法によって勝利を勝ち取ってきていた。

 一方カールの方は、世にも珍しい光と毒の二属性の魔法を操る魔剣士であり、その魔法の精密さや威力は言うにも及ばず、ヴォイドほどではないものの、卓越した剣技を持っていた。


 そのため、俺は静かに闘いの行方を見守ることにした。


「それでは、決勝戦ヴォイド対カール・マコイル、試合開始!」


 試合開始の合図とともに、カールは光魔法を放った。


閃光フラッシュ!」


 カールが魔法を放った途端、カールの体からカッと強い光が放たれた。この魔法に殺傷能力は無く、あくまで目つぶし的な用途で使うようだ。しかし、ただの目つぶしと言えど対人戦の一対一では強力な武器となる。この一手はヴォイドにはかなり堪えるだろう。


 その予想通り、ヴォイドは目が使えず、初めの数分はかなりの苦戦を強いられた。しかし、ヴォイドは勘と経験だけを頼りに何とか乗り切っていた。閃光の効力が切れると、ヴォイドは目を使えるようになり、本調子を取り戻した。


 その圧倒的剣技でカールを徐々に押し始めたヴォイドだが、カールも黙ってはいない。次々に二属性を絡めた魔法を使い応戦している。俺たちは彼らの先頭に見とれてしまっていた。美しい剣技、頭脳を使った魔法による攻防。俺たちを魅了するにはそれだけで十分だった。


 しかし、そんな戦いも終わりを迎えた。今まで剣だけで応戦していたヴォイドがついに魔法を使ったのだ。ヴォイドが何かを呟いた途端、カールは魔法の使用をやめた。そして、勝てるはずのない剣で応戦し始めた。

 当然、ヴォイドの方が剣の腕前はある。そのため、魔法を使わないカールは徐々に押され始め、そして敗北した。


「ヴォイド、一本!勝者ヴォイド!」


 アメリア先生の号令によって決闘は終了した。


「よし。では賢人武闘祭の出場選手はヴォイドで決まりだ。ヴォイド、賢人武闘祭の開催される七月までにはまだまだ時間がある。鍛錬を怠らず、今よりもより強くなれ」


ゴーンッゴーンッ


 先生がそう締めくくるのと同時に学校の鐘が鳴った。


「一限はこれで終了だ。次は魔法薬学がある。遅れないように」

 

 そう言うと先生は格技場を後にした。いやいや、ちょっと待て。俺が不参加にさせられた理由を聞いてないぞ!俺には理由を知る権利があるはずだ!そう思った俺は急いで先生のことを追いかけた。


◇◆◇◆


「だから、何度も言っているだろう!お前では強すぎて戦闘にならないからダメなんだ!それに、校長はお前の得体のしれない闇魔法を極度に恐れている。大方、自分の地位と名誉に傷がつくのを恐れているのだろう。ディオラ魔剣士学校は得体のしれない魔法を使う化け物を育てている、とな」

「ぐぬぬ…っ!」


 魔法薬学が始まる前、俺は急いでアメリア先生を問い詰めに言った。俺が賢人武闘祭に参加できない理由。それは俺が強すぎるからだそうだ。強すぎるなら賢人武闘祭に泣いてでも出場させればいいものの、今度は校長が俺のことを認めてくれない。自分の地位と名誉のために、生徒のことを賢人武闘祭に出さないなんて。賢人武闘祭に負けたら、それこそ校長の名に傷がつくというのに。ばかげた話だ。


「一介の教師である私には、上が決定したことを覆す権限は持ち合わせていない。諦める事だな」


 そう言うと先生はさっさと教室に戻っていってしまった。

 俺にはどうする事も出来ない。仕方なく俺は次の授業に遅れないようにするため急いで教室に戻った。


◇◆◇◆


 その日の夜。

 学校の屋上には二つの人影があった。


「もう一度だけ上からの命令を確認する」

「一年、ダクネス・ロードルを殺せ…だよね」

「そうだ。あいつはこの学校の寮の一番東の部屋にいる。今夜はまだ決行しない。もっと様子を見て弱点が分かってからだ」

「ん。わかっている」


 そう言葉を交わすと、影は闇に消えていった。


------------------------------------------------------------------------------------------------~あとがき~

学校の課題に追われているため、もしかしたら明日の更新が出来ないかもしれません。ご了承ください。

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