第11話 トーナメント
俺たち一年生は格技場に集まった。そこには既にアメリア先生と保険のシベルク・カトンという女性の先生がすでに到着していた。俺を除いた一年生全員は木剣を持ち模擬戦のトーナメント表を見ていた。先生が宣言した通り、そこに俺の名前は無い。クソッ、後で直談判に行ってやる。
「それでは、第一試合ヴォイド対マグナム・ルーン。試合開始!」
先生の腹の底から出てくるバカでかい地声は、音魔法を介さなくても十分に響き渡る。その声とともに第一試合が始まった。
マグナスは弱いくせに大口をたたいて俺に勝負を挑んできたバカだがリアと違って心は折れていなかったらしい。これまでの人生で挫折を経験したことがある人間なんだろう。
「俺よりも高い序列の奴が平民とは腹が立つ。前回はダクネスに挑んで敗れたが、あの時の俺とは一味違うぜ。お前のような平民ごときに負ける道理はない!」
「……」
相変わらずの安い挑発に乗らず、静かに相手を見つめるヴォイド。マグナスはヴォイドに向かって切り込んでいった。そのまま胴に向かった単純な横薙ぎを放つと思われたが、ヴォイド目の前にまで言った瞬間、奴は頭上に高く飛び上がり土魔法を放った。
「
マグナスがヴォイドに向かって突き出した掌の前には、人間の頭一個分くらいの岩玉が出来上がった。それをヴォイドに向かってすさまじい速度で放つ。まともに直撃すれば体を貫くほどの岩玉。それをヴォイドは静かに見返すと、剣を一度鞘に戻した。そして目の前に来た岩玉に向かって一閃。
岩玉はスパッと一刀両断にされ、地面に落ちた。
「危ない!」
「!?」
クラスメイトの誰かが叫んだ。なぜなら、空中に岩の足場を作ったマグナスが、岩玉に向かって飛び込み、陰に隠れて突進してきていたからだ。
「終わりだああぁぁぁぁ!」
完全に不意を突いたマグナスの攻撃。その太刀筋も悪くなく、絶対に刺さったと思われる攻撃だった。皆がマグナスの勝利を確信した次の瞬間、ヴォイドの口から言葉が発せられた。囁き程度だったので何を言っているのかは聞き取ることはできなかった。
マグナスがその囁きを聞き取ったとたん、マグナスは振りかぶっていた剣の構えを解きそのままヴォイドに向かって突っ込んでいった。攻撃のないただの突進。ヴォイドが避けられないはずがなく、スッとヴォイドが横に避けると、当然マグナスは地面に顔面から激突した。
ドオォォォォン!
すさまじい衝撃音とともに試合終了の合図が鳴る。
「マグナス・ルーン、戦闘不能!勝者、ヴォイド!」
…イタソォ。
じゃなくて、一体何が起こったんだ?あんなに倒す気……いや殺す気満々の鋭い攻撃だったのになぜ急に剣を下ろしたんだ!?あのままいってもヴォイドを倒すことはできなかっただろうがそれが剣を下ろす理由にはならない。わかっているなら最初からそんな攻撃はしないはず。では一体なぜ?
状況から考えてヴォイドがなにかしたのだろうが。剣を下ろせとでも囁いたって言いうのか?そんなことマグナスが聞くわけがない。なら呪詛魔法とでも言うのか?そんな魔法見たことないが。少なくとも俺の周りの人間にこんな感じの魔法が使える人間はいなかった。
クラスメイト全員がキツネにつままれたような顔をしている中、ヴォイドは涼しい顔をしながら、悠々と俺たちの前を横切って行った。
◇◆◇◆
「それでは、第二試合、レオン・ギルマス対イリス・ラクトリア。試合開始!」
イリスは木剣を構える。心なしか目が生き生きしているように見える。この二週間で何か必殺技みたいなものでも作ったのだろうか?だとしたら天才だが…まぁ、戦えばわかることだ。
「え、えいっ!」
そんなかわいらしい掛け声とともにイリスはその場で剣を振った。飛ぶ斬撃でも出るのかと思ったが、ただ木剣を振り下ろしただけだった。
……どうやら本当に一度も剣を握ったことが無いようだった。どうやって模擬戦の試験をクリアしたんだろう?他に全てを賭けたのか?
レオンはぽかんとした顔でイリスを見ている。しばらく何度も地面に木剣を振り下ろすイリスを見ていたレオンだったが、呆れかえった目を向けながらイリスに向かって踏み込んだ。
いくら序列九位の男と言えど、そもそもこの学校の水準が高いため、姿勢や鋭さは中々に良い。そしてイリスに向かって木剣を振り下ろした。さすがにこれはレオンが勝っただろうと誰もが思ったが、レオンが木剣を振り下ろしたその先には、水の鎧を着たイリスが無傷の状態で立っていた。
「な、なに!?」
「これは【
そう言うと、イリスは水鎧を身にまとったまま、目の前にいるレオンに手をかざす。とっさに危険と判断したレオンがバックステップで後ろに戻るが時すでに遅し。イリスの掌からは既に魔法が放たれていた。
「【
イリスが放った魔法は高圧水線となり、レオンの体に直撃した。爆発が起こり、水しぶきによって何も見えなくなる。続いて何かが壁にぶつかるドンッという音が聞こえて来た。やがて、水しぶきが収まると格技場の壁まで吹き飛ばされ、泡を吹きながら気を失っているレオンがいた。
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