第10話 賢人武闘祭
俺とリアが協定を結んだ次の日から、リアは俺という学校に行きたくない要素が消えたため、登校してくるようになった。周りの人間はみな笑顔でリアと接している。気遣いが出来る人たちばかりなのか、なぜ来なかったのか、どうして来るようになったのかなどという無粋な質問はしていなかった。
そして決闘からかれこれ二週間たち、上級生との決闘を行うことが出来るようになった。
俺は今、アメリア先生に決闘の立会人申し込みを行っている。俺は自分と家の幸せをつかむために常に上に挑み続ける。
俺が決闘を申し込んだ相手は、序列順位が十位上の三年生、エドモンド・フォワードだ。この人は火、毒の二属性の魔法の使い手で、序列順位は十五位。
この世界での二属性の魔法を操るものはとても珍しく、基本的に強い人が多い。魔法属性のレパートリーが増えれば増えるほど、戦いの幅が増えるからだ。エドモンド先輩も例にもれず、火と毒を巧みに使い分けながら相手を翻弄する戦いをしてくるようだ。
上を目指すためにはまず最初に越えなくてはいけない壁。それがエドモンド先輩だった。
「よし。決闘を受理した。あとはエドモンドに私から伝えておこう」
「ありがとうございます。先生」
「一つ、個人的な事で質問を言いか?お前が使ったあの魔法、いったい何属性なんだ?私はかれこれ五年ほどこの学校に勤務しているがこれまでの人生で一度も見た事がない魔法だった」
あの決闘の話をしているんだろう。
「俺の魔法は闇属性です。俺自身、一部の文献に載っている程度の魔法だと聞きました」
「なるほど。そうか闇属性か。道理で知らない魔法のわけだ。すまないないきなり聞いて」
そう言うと先生はエドモンド先輩に決闘のことを伝えに言った。決闘は二週間後。それまで闇魔法と剣技をもっと磨こうと思う。
◇◆◇◆
「入学から二週間がたち、上級生への決闘を申し込むことが可能となった。現に私の所にはいくつかの申し込みが入ってきている。だが今はその話を一度横に置いておく」
俺が決闘を申し込んだ次の日のHR。アメリア先生は重要な話があると言って、話し始めた。
「七月に行われる『賢人武闘祭』。あれの出場選手の取り決めを行う」
教室の仲が一気にどよめいた。無理もないだろう。『賢人武闘祭』とは、ヴォイド魔剣士学校を含めたこの国の三大名門校と呼ばれる氷王魔導学院、怪刃魔法学校の三校の代表三名が戦う、この国の国民いや隣国など周囲の国の人々にも周知される大々的なイベントだ。
例年、そのイベントの代表選手に一年生が選ばれたことはなく、今年の一年生が優秀であることが伺える。
「今年は一年生から一人、先鋒として出場させる。これは異例の事態だ。普通なら序列上位に固まっている六年を出場させるからな。とにかく、これから出場選手を選んでもらおうと思う。まず、この大会に出たい奴はいるか?」
当然、と言った顔で全員が手を上げる。俺もその中の一人だ。
「やはりそうだよな。選び方は…そうだな、これから勝ち抜きの模擬戦を行う。その中で優勝した奴を『賢人武闘祭』の出場選手として登録しよう」
「ええ~。先生、それは俺たちが不利なんじゃないですか?」
序列九位のレオンがそう言う。それに対し先生は、
「それはお前の実力が低いだけだ。私には関係ない。これまで鍛錬は怠っていないのだろう?ならその成果を発揮して精々しがみつくことだな」
「……」
私には関係ない、か。ククッ、相変わらず冷淡な先生だ。
「一限の授業は選手決めとして使うことが朝の会議で決まっている。早速模擬戦を始めようと思う。格技場に集合しろ。おっと、ちなみにいうがロードル。貴様はこの大会には出場させん。わかったか?」
そう言うと、先生は教室を出ていった。
……はい?
なんで?俺なんかした?普通に出場したいんだけど。このままいけば俺が一番確率高かったんですけど?
とにかく、ざわざわしながらも全員格技場へと移った。
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