深夜2時のコンビニ、同じアイスを手にした眼鏡男はコンビニのアイス売り場でよく見る人だった。ともあれ一人暮らしの部屋へ帰ってきた彼女は自身のことを思い起こす。ヤングケアラーとして追い立てられた半生と、自由となった後も目標を持てずにただ生きている現状を。そんな中、ふと思うのだ。彼にアイスがどんな存在か訊いてみようか。
前述の“俺”さん視点の奇数回に対し、こちらは件の女性である“私”、江崎さんパートです。
祖母の介護を必死でこなすよりなかった学生時代を経て、なんの余裕もないまま手で憶えた介護の道へ逃げ込んだ彼女。26歳になっても現状を変えられなくて。
“私”さんは凄まじいまでの脱力感に苛まれ、前へ進めずにいる人。綴られるその重い心情は本当に細やかで、濃やかで。それが際立たせるのですよね。ふと思い立った彼女の一歩の大きさを。静もよし、動もよしなキャラの完成度、ここに注目ですよ!
ストーリーも大きく動き出した本作、ぜひ追いかけていただきたく!
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)