第18話 肉球と指輪



 今、コナーと私は向かい合い…お互いをじっと見つめていた…


コナーが私の頭に手を乗せる、手を離す…、また手を乗せる…を繰り返していた。


「アハハ!…やっぱりララサチに触らなくても平気になってる~!」


 コナーが嬉しそうに話しているが、このと言うのは…もう私に触らなくても私の言っていることが分かるようになった、ことらしい。

 私の方はコナーが手を乗せると離すごとに、こんにちは…を繰り返していて…まるで自分がオウムになった気分で…それがどんな重要なことかなんてどうでも良くなっていた。



「これは便利だね、遠くにいても話せるんだよ! 楽しいね~!」


「…そうだね、楽しい…」


「何? ララサチは嬉しくないの?」


「…コナーはさ、……う~ん…」


「フフッ… 僕はね、色々と考えるの辞めたんだ…考えてもどうにもならないことって沢山あるんだよね、この目の前にいる君なんてその塊みたいなものでしょ? どうにかなる!ってサチの考えに賛同しているんだよ」


「…私の考え…、そうか…私はさ、コナーと一緒にいて…ちゃんとしなきゃ!ってずっと思ってたんだよ…そうしないと…」


「…そうしないと?」


「…こんな私…だから、追い出されない様に…と………」


「え⁈⁈ なにそれ???」



 私たちは長く話していつの間にかお互いがお互いを思い合い変わってきていることに気が付いた、そしてその変化は無理やりやっていることではなく自然に近い状態で変化していることで嫌ではないということ、むしろ自分が相手によって変われることが楽しく嬉しいことであるかの様に感じていた。


「じゃあ、こらからもよろしくね!」


「うん、ララサチ…ずっと一緒にいてくれる?」


「コナーが嫌にならない限り…」


「またそんな風に…、僕が嫌になる訳ないよ…これからもずっとララサチのことが好きだよ」


「…⁈⁈⁈…」


「猫の指に指輪ってできるのかなぁ???」


 そう言ってコナーが私の手を取る、肉球をフニフニして手を広げたりしている…そして指をまじまじと見つめだした


「ブハッ…!」


「…僕は真面目に言ってるんだけど…」


「ごめん、ごめん! …ほら、くすぐったくって! フフッ…私も好き…」




 数日後、私はコナーとコナーの両親の家に来ていた

今回はこれから一緒に過ごすパートナーとして―――


「…それで、いつこっちに引っ越してくるんだ?」


「お父さん、その話は…」


「改装工事はどこに頼むかな? コナー、ツテはあるんだろう?すぐにでも話しておきなさい」


 コナーのお父さんはニコニコしながらこちらの話なんて聞こうともしていない…

隣にいるお母さんも…もはや私を見る目が獲物を捕らえた狩人の様になっている…


「はぁ~…、ダメだな…どうしようか、またの機会に説得するしかないな…」


「私は良いけど? コナーは同居って全然考えられない?」


「…全然って訳じゃないけど…う~ん…」


 煮え切らないコナーをみてお母さんが一言、私たちが考えもしなかった目の前が開けることを言った


「お父さんの言うように早く改装しましょう! 外も中もデザイン出来る人がいるんだから、猫の住みやすい家にすればいいのよ、使うララサチが使いやすい様に!」


 私はコナーの顔を見た、彼もハッとしたような顔つきだ…

猫になってから考えもしなかった…私のインテリアデザイナーとしての仕事…何件かペットと暮らす空間をデザインしたこともあるけど、これはにしかできない…使う側からみたデザイン!


「…コナー…やってみない?」


「うん、僕もなんだかワクワクしてきた…ララサチと一緒に仕事出来るのも嬉しいしね!」


「よし! やろう!!!」


 



     ―――完―――


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猫の私と猫にさわれない猫好きの彼 篠キニコ @Ni_Ko

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