第75話 終結 そしてエピローグ
(さて、アスカ。あんまり長引かせるのも面倒だから、一気に倒しちゃおう)
(うん。そうしたいんだけど、結構しぶといんだよね、この神様)
(まあ、それもそうか。ステータスはアスカの方が上だけど、それほど差がないからね。ということで、ここはお兄ちゃんに任せてもらおうかな?)
(わかった! アスカは何すればいい?)
(よし、アスカはヘルティウスの動きを一瞬でいいから止めてくれるかな? トドメはお兄ちゃんに任せてくれ)
(オッケー!)
おそらく俺の魔法一つで片はつくと思うが、せっかくだからアスカと協力して倒した感じにしたい。
俺との相談を終えたアスカは、再びヘルティウスに剣を向ける。
「いくよ! 飛刃斬!」
アスカのかけ声とともに振られた剣から、いくつもの斬撃がヘルティウスめがけて飛んで行った。
「ック!? 小癪な!」
その斬撃をギリギリのところで躱し、大剣で弾き、少々鎧に傷を増やしながら何とか致命傷は避けているヘルティウス。
さらにアスカは左手を上に向け、異常なほどの魔力を込めた
ヘルティウスもこの
十分に
このタイミングで『来る!』とヘルティウスは思ったのだろう、今日一番の集中力で
その様子を見たアスカはニコッと天使のような笑みを浮かべ……
「
これまた物凄い魔力を込めた
(よくやったアスカ!)
俺がその隙を見逃すはずがない。いや、正直言うとアスカの天使の微笑みに見とれ危うく見逃すところだったのだけど……
「グォォォ、こ、これは」
ヘルティウスが目をそらした隙に、俺は無詠唱で
必至に抜け出そうともがくが、俺が作り出した氷はひび一つ入らない。それならばと炎魔法を自分にぶつけるが一ミリたりとも溶けることはない。
(アスカ、ヘルティウスの首に掛かっているペンダントを取ってくれ)
何となくあのペンダントが気になった俺は、アスカにペンダントを取るようにお願いした。
(わかった!)
アスカは身動きが取れずにもがいているヘルティウスから、いとも簡単にペンダントをむしり取る。
「き、貴様! それを返せ!」
ペンダントを取られ明らかに動揺を見せるヘルティウス。やはりこのペンダントには何かあるようだ。
「あれ、お兄ちゃん。ペンダントの中に誰かいるみたいだよ?」
アスカが、青白い光を放つペンダントの中をのぞき込みそんなことを言い出した。あの光、何か懐かしい感じがすると思っていたけど、やはりそういうことか。
「おにい……ちゃんだと? 貴様、一体誰に向かってそのような……ハッ!? まさか、貴様には仲間がいるのか!? そうだ、そうだな!? だから我と戦っている間にもアプペスを倒すことができたのだな!」
おっと、アスカがお兄ちゃんと口にしたことで、俺の存在がバレてしまったようだ。そして、ヘルティウスは唯一動く首を動かして辺りを見回している。どうやら、俺がどこかに隠れていると思っているようだ。
まあ、それよりも今はペンダントの中にいる人のことだな。いや、俺の予想が当たっていれば人ではないか。
(アスカ、そのペンダント壊せるか?)
(ん? やってみるね!)
アスカはペンダントを左手の上に置き、右手でチョップを試みた。一見、可愛らしく見えるがこのチョップも侵略者程度なら真っ二つにする威力を持っている。
だが、『ビシッ!』という音はしたが、ペンダントはびくともしなかった。それから、武器での破壊、魔法での破壊を試してみるが、何でできているのか青白く光るペンダントは傷一つつかなかった。
「ククク、無駄だよ。そのペンダントは我とアプペスの合作だからな。20万の魔力を詰め込んだ封印具となっているさ。クハハハハァァァグアァ!」
俺は小うるさいヘルティウスを完全に氷の檻に閉じ込める。
しかし、ヘルティウスの言葉でわかったことがある。つまるところ、このペンダントは20万以上の魔力か物理ダメージを与えれば壊すことができるということだ。
(アスカ、下に降りてペンダントを地面に置いてくれ)
俺の意図を察したのか、何も言わずアスカは地面に降り立ちそっとペンダントを地面に置く。近くには氷漬けになったヘルティウスが落ちていた。
ようやく動けるようになった仲間達が集まってくる中、俺はアスカの頭上に一本の
集まってきたみんなは聞きたいことがたくさんあるのだろうが、開きかけた口はアスカの頭上に現れた黄金色の槍を見た途端閉ざされてしまった。
(行け!)
どれほどの魔力が込められているのかはわからないが、明らかにアスカが作った
バリン!
金属が弾けるような音がして、黄金の槍はペンダントを貫き、さらに地面を補強するためにペンダントの下に張ってあった結界をも破壊し消え去った。
割れたペンダントの中から真っ白な光が溢れだし、辺り一面白色に照らし出す。そして、その中に一人の女性が佇んでいた。薄い金色の髪を腰まで伸ばし、薄い水色のドレスから覗く顔や手は雪よりも真っ白で、優しげながらも強い意志を感じさせる大きな瞳がこちらを見つめている。
「まさか、人間に助けて貰えるとは思いませんでした」
その声を聞いた瞬間、俺は自分の予想が間違っていないことを確信した。
(転生の女神、システィーナ!)
そう、ペンダントに捕らわれていたのは前転生の女神システィーナだったのだ。
俺は慌てて時空操作Lv6
真っ白な光すら停止した空間でも、システィーナは変わらず動き続けている。やはりあらゆるスキルを与えることができる女神だけあって、
(アァァァァァ!? システィーナさん!?)
おっと、アスカも目の前の女神がシスティーナだと気がついたようだ。
「私の封印が解けたということは、ヘルティウス達は倒されたということでしょうか? それに、この封印はあの二人が魔力の限りを尽くして作ったもの。20万を超える魔力を加えないと壊れない代物だったはずですが……」
そこで言葉を句切ったシスティーナはアスカをじっと見つめ……
「えっ!? もしかして……アス……カさん?」
「はい、アスカです! その節はお世話になりました!」
「ということは、ショウさんもいらっしゃるのですか?」
(はい、ここにいますよ! って、聞こえないかな?)
(ああ、聞こえました。大丈夫。初めに転生させたのは私ですもの。存在さえわかれば、声を聞くくらいできますよ)
(おお! 久しぶりにアスカ以外の人と会話を……女神様は人じゃないけど。それで、システィーナはなぜペンダ……ントに……………!? アスカ!? なぜお前はシスティーナのことを覚えてるんだ!?)
油断した。システィーナの登場で聞き流してしまったが、記憶をなくしたアスカがなぜシスティーナのことを覚えているんだ!?
(えっと、どうしようお兄ちゃん……やばいよやばいよ……全部、思い出しちゃったぁぁぁ)
(ウォォォォォ、あすか!? お兄ちゃんが誰だかわかるのか!?)
(わかるよぅ……翔お兄ちゃんでしょ……)
(うう、ぐすん。あすかが……俺のかわいいあすかが戻って来たぁぁぁ)
「あの、お取り込み中のところ申し訳ないのですが……」
システィーナが何か言っているようだが、こちらは今それどころではない。アスカの記憶が戻ったのだ! 女神の相手をするより重大な案件が発生してしまったのだ!
(お兄ちゃん。それよりも、それよりもどうしよう。わたし、わたし、キリバスさんとソフィアさんの子どもだよぅ……)
(うっ、そ、それは。よーく考えればちょっときついかも……友達がいきなり両親になってたら、俺でもどうしていいかわからないぞ)
(恥ずかしい……記憶が戻った今、お父さんとお母さんの元に戻るのが恥ずかしい……)
なるほど、キリバスとソフィアをお父さん、お母さんと呼ぶということは、生まれてから今までの記憶も残っているということか。それは、どんな気分なのだろう。俺には想像もできないな。だが愛する妹が困っているのだ。兄である俺が何とかしてやらねば!
(よし、アスカ。まずは今まで通り2人の子どもということで通そう。それで、気持ちの整理ができたところで2人に真実を打ち明けるのだ!)
(うぅぅ。恥ずかしいけど、それしかないよね。ああ、緊張してきた。上手くできるかな)
「おーい、おふたりさん? 聞こえていますかー」
(ああ、すまない。実は記憶喪失だったアスカの記憶が戻ったんだ)
「あっ、やっと返事してくれた。それはおめでとうございます? それにしても、2人は自力で転生したのですね。だから私も気がつかなかったんだわ」
(ありがとう。確かにその通りだよ。でも、まさか同じ世界の未来に転生するとは思ってなかったけどね)
「そうでしたか。でもわからないものですね。私があなた達を転生させたときは、ちょっとやり過ぎたかなと思いましたが、まさかその2人に助けて貰えるとは。過去の私、えらい!」
(自画自賛かい! まあ、確かにこの能力をくれたのはシスティーナだけど……)
「うふふ、冗談ですよ! あなた達2人には感謝していますよ!」
そんな女神との会話の最中だが、これからのことを考えてかアスカが顔を赤くしながらもじもじしている姿のなんとかわいいことか。
おっと、そんなこんなで俺のMPもヤバくなってきた感覚がする。あと数分で時間が動き出しそうだ。
(システィーナはこれからどうするんだ?)
ヘルティウスを倒したとはいえ、元女神様が転生の神に戻ることができるのか心配になった俺は聞いてみた。
「私は神界に戻ります。ヘルティウスが倒された今、私が戻るのを止めるものはいませんからね」
システィーナは氷漬けになったヘルティウスを一瞥してそう言った。
よかった、システィーナは無事転生の女神に戻ることができるようだ。
「それに、そこのヘルティウスとアプペスにはきついお仕置きをしませんとね。放っておけば彼らはまた神として転生するのでしょうが、私がそうはさせません。あの2人は一生プランクトンとして転生し続ける呪いをかけてやりましょう」
お、恐ろしい! 女神システィーナ恐るべし! 絶対怒らせることなかれ……
俺がドン引きしているのに気がついているのかいないのか、そのままシスティーナは笑顔で会話を続ける。
「さて、私はそろそろ戻りますね。アスカさんも今度は居場所がありますから、この世界で長生きしてくださいね」
「あっ、はい! ありがとうございます!」
ようやく意識がこちら側に戻って来たアスカが、システィーナに元気よくお礼を言った。
(それじゃあ、女神様もお元気で)
(ありがとうショウ。でもあなたも気をつけてね。あなたの力は神の力をも上回ってしまっているようだから、世界を壊してしまわないようにね)
(ああ、大丈夫。アスカが住むこの世界をこの俺が壊すわけがない)
(うふふ、相変わらずの妹愛ね。それじゃあ、本当に助かったわ。ありがとう。そして、さようなら)
それだけを言い残してシスティーナは神界へと帰っていった。
時が動き出し残された俺達は……
仲間からの尋問という質問攻めが待ち受けていた。
▽▽▽
そして半月後。
(アスカ、今日こそ真実を打ち明けるんだろう?)
(待って! ちょっと待って! まだ心の準備が……)
(おいおい、この半月何度同じセリフを聞いたことか。大体、キリバスもソフィアもアスカの様子がおかしいことに薄々気がついていると思うぞ?)
(私だってわかってるよ! だけど、どうしても恥ずかしくて今までみたいにお父さん、お母さんって呼べないんだよ!)
(だから、そろそろ真実を打ち明けるべきだろう)
(うぅぅ、お兄ちゃんのいじわる)
(大丈夫。お兄ちゃんがついてるから。キリバスとソフィアもアスカが生きていたって知ったらよろこんでくれるよ!)
(……うん、私、キリバスさんとソフィアさんに本当のことを言ってくる)
(よし、それでこそ俺の愛する妹だ!)
覚悟を決めたのかアスカは深呼吸を一つして、キリバスとソフィアがいる居間へと入っていった。
「お父さん、お母さん話があるんだけどいいかな?」
「お、どうしたアスカ。お前から話があるなんて珍しい」
「そうね。最近、ちょっと様子がおかしいと思ってたから、何かそのことに関係あるお話かしら?」
キリバスとソフィアの前に正座で座ったアスカが語り出す。
「あのね、実はね……」
~完~
続・転生したのは妹で俺は妹のチートスキルを最後まで読んでいただきありがとうございました!
この作品はここで完結となります。
また近いうちに新作を投稿したいと思いますので、そちらの方もよろしくお願いしますm(__)m
ももぱぱより
続・転生したのは妹で、俺は妹のチートスキル ももぱぱ @momo-papa
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