学習発表会

桜盛鉄理/クロモリ440

第1話

教室にて。学習発表会を間近に控えた先生と生徒の会話。


「はい、しずかにしてくださーい。では調べてきた内容を順番に発表してもらいます。じゃあ1班から」

「は~い。3月3日は~桃の節句です。この日は女の子のお祝いに~おひなさまを飾ります。おひなさまには~男びなと~女びなと~ボスニアヘルツェゴビナがあり」

「ちょっと待って! 何なの、ボスニアヘルツェゴビナって!」

「ボスニアヘルツェゴビナは東ヨーロッパのバルカン半島北西部に位置する共和制国家でサラエボを首都とする……」

「そういうんじゃないから! 何でそこを詳しく説明しようとしてるの?」

「がんばって調べました~」

「それは確かに大事だけども! ……はあ、もういいわ。じゃあ2班」

「は~い。お姫さまのお付きの女の人は~三人間者といいます」

「えっ、間者?」

「特に優秀な間者はくのいちと呼ばれ権謀術数が飛び交う伏魔殿の宮廷で暗躍しました」

「いきなりダークファンタジーな世界に引きずりこむのやめて! くのいちとか何なのよ」

「がんばって調べました~」

「それはもういいから! ……ええと、3班は五人囃子ね?」

「はい。五人囃子は黒装束に身を包み、手裏剣、吹き矢、目つぶしなどで武装し……」

「おかしい! おかしいでしょ! それ五人囃子じゃなくて五人アサシンだよね! 楽器はどうしたのよ」

「アサシンなので音の出るものは持ち歩きません」

「ついに自分でアサシンって言っちゃったよ!」

「先生、ぼくたちは仕丁しちょうについて調べました。仕丁はそれぞれが泣き、笑い、怒りの表情をしていることから三人上戸とも呼ばれます」

「あら、4班はちゃんと調べてきてるじゃない。それで?」

「厳しい修行の果てに感情をコントロールして相手の隙をつく『行意門』の最終奥義を極めた主人公は……」

「いやいやいや! それはジャッキー・チェンの『笑拳』だよね! 全然関係ないよ? しかしそんな昔の映画よく知ってたわね」

「お父さんと一緒に3回見ました」

「お父さん、何してくれてんのォ! 子供を何に育てようとしてるの? ……はあ、じゃあ次は5班。何か嫌な予感しかしないけど」

「はい。随身ずいじんと呼ばれる二人組は宮廷を警護する武官です。向かって右側が阿形あぎょう、向かって左側が吽形うんぎょうで……」

「待て待て待てーっ! 右大臣と左大臣でしょう、何言ってるの!」

「でもお姉ちゃんが」

「お姉ちゃん?」

「絶対こっちの方がかっこいいからって」

「そういう問題じゃないでしょ!」

「ついでに絵も描いてくれました」

「何この絵、無茶苦茶うまっ! ん? 下にサイン……春告鳥うぐいすももんが? 漫画家プロの犯行じゃねえかァァ! ……ああもう、あなたたちどういうつもりなの! 一体これどこに発表するつもりなのよ!」

「「「コントグランプリ仮装部門です!」」」

「確かにいいとこ行きそうだけども! ……ん、仮装? お雛様の仮装? 十二単じゅうにひとえとか絶対一人で着れないでしょ? それは誰が……指さして全員でこっち見んなァァァ!」

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学習発表会 桜盛鉄理/クロモリ440 @kuromori4400

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