「教えてくれませんか?」

「ねぇハツキさん。いま時間ある?」

「うん、大丈夫、だよ。どう、したの?」


 ある日、ナツメが話しかけてきた。別に話しかけてくること自体は今までもあったけど、二人だけで話すのは多分出会った日以来だろうか。


「ありがとう。それで、えっと、お願いがあるんだけど……ハツキさん、私に料理の仕方を教えてくれませんか?」

「料理?」

「はい」

「えっと……教える、のは、何も、問題は、ない、けど、何で、突然、そんな、お願い、を?」


 そう聞くとナツメは、照れたように顔をほんのり赤くして、応えた。


「その、お母さんが料理してたのが、すごく楽しそうで……私も、やってみたいなって思ったの。だから、教えてほしいな」

「そう、なんだ……うん、もちろん、いいよ。それじゃあ、どんな、料理、作って、見たい?」

「ありがとう、ハツキさん! どんな料理……あ、この前作ってた、シチュー? っていう料理を作ってみたい」

「わかった、じゃあ、キッチン、行こっか」

「はい!」


 そんな感じでナツメと一緒に料理を開始した。とりあえず、軽く調理器具の説明をした後、野菜やお肉の切り方を教えた。ナツメは飲み込みが早く、一度説明すれば、大体はできるようになっていった。


「すごい、ね。こんなに早く、上手に、できる、ように、なる、なんて」

「ハツキさんの教え方がうまいからだと思う。本当にわかりやすくて、それに……すごく、楽しい」


 そう言って、楽しそうに笑っているナツメを見ると、心底料理の練習をいっぱいしてよかったと思う。


(良かった。ナツメ、楽しそう。わたしももっと、おいしい料理が作れるように頑張らないと)


 そのほかの工程も終わり、あとは待つだけになったので、二人でちょっとした雑談を始めた。その中でふと気になったことがあり、聞いてみることにした。


「ねぇ、ナツメ。嫌、だったら、言わなくて、いい、けど……」

「なに? ハツキさん」

「その……ナツメの、お母さんって、どんなヒト、だった、の?」


 わたしがそう言うと、驚いたような表情をしたので、やっぱり聞かないほうがよかったと思い、謝ろうとした。


「あ、やっぱり、聞いちゃ、ダメだった、よね? ごめ――」

「ううん、気にしないで、ハツキさん。ちょっとびっくりしただけ。お母さんが、どんな人だったか……そうだね、すごく穏やかというか、マイペースなヒトだったな」


 ナツメは、家族と過ごしていた日々を思い出しているのか、目をつぶり、口元を緩めていた。そして、その思い出の温かさと少しの寂しさを感じる、そんな声で、話を続けた。


「どんなに忙しい時もいつも楽しそうにしていて、辛そうな表情をしていたことなんて、一度も見たことがなかった……最期の時も、私を励まして、笑ってた。本当に、優しかったんだ」

「……そう、だったんだ」

「はい。今でも、大好きな、そんなお母さん、です……あ、そうだ、ハツキさんのお母さんって、どんなヒトだったの? 教えてほしい」


 ナツメは、大好きと言ったのが恥ずかしかったのか、顔をほんのり赤くしていた。そして、それをごまかす様に、私にそう聞いてきた。


「わたしの、お母さん……そう、だね、すごく、賑やかな人、だった。いつも、わたしの、ことを、楽しませ、ようと、してくれて、わたしが、笑った、時に、すごく、嬉しそうに、してた。そんな、ヒトだった、よ」

「へぇ……ふふ。ハツキさん、子供みたいな表情してる」

「え?」

「いつもはお母さんみたいな、穏やかで、優しい顔してるけど、今のハツキさん、すごくかわいい笑顔してた」

「…………そ、そう、なんだ」

「あ、顔赤くなってる。かわいいです」

「うぅ……あ、時間だ。早く、しないと」

「ふふ、そうだね。あ、私はみんなを呼んでくるね」

「うん、お願い」


 自分の顔が熱くなっていることを自覚しつつ、わたしはシチューを皿によそい、食卓へと運んだ。みんなが来た後、隣に座ったエイナに顔が赤くない? と聞かれた。シチューが熱かったせいだとごまかしたが、不思議そうな表情をしていた。ごまかされてくださいお願いします。

 ナツメと一緒に作ったシチューは、みんなとても美味しそうに食べてくれていた。その様子を見て、ナツメはとても嬉しそうに笑っていた。





あとがき

 というわけでナツメ回でした。しゃべり方がなんか安定してない気はしますが、そういうものだということで。

 言い忘れてましたが、実はナツメの方が身長高いです。そしてこれからも伸びます。今は5㎝位の差ですが、これからどれくらい差が広がるか、楽しみですね。

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転生エルフは日常を愛す 榊原修 @sakakibara2539

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