ねこどめ。

卯野ましろ

ねこどめ。

 よし、やってやろう。

 そう思った瞬間、


「ニャ」


 人間の手の上に、あるものがピタッと優しく乗せられた。


「う……」


 戸惑う人間。

 小さなもふもふが自分の手に触れた直後、キラキラした真ん丸な二つの目に見つめられている。



 やめニャよ。

 そんニャことしちゃダメだよ?

 あニャたの為を思って止めているの。


 もふもふ。

 じー……。

 キラキラ。

 きゅるるん。


「……あーっ! もうやめた!」


 聞こえないのに聞こえてくる、言葉と擬音。それらに負けた人間は、すぐに良からぬことをやめた。


「ああっ、かわいいな! もうっ!」

「ニャアン」

 

 そして、もふもふが始まった。




 今もどこかで、猫が人間による良からぬことを止めているかもしれない。

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