第2話 興味

(チャイムの音)

ホームルームが始まるチャイム。


新しいクラスにワクワクしている皆の声で、チャイムはほとんど聞こえなかった。


僕は大人しく自分の出席番号と座席を確認し、そこへ座った。


「はーい、お前らホームルーム始めるから席に着けー。」


先生の声が教室に響き、皆は静かになり席に着いた。新しい担任は、"基本は優しいが怒ると怖い"で有名な畑山だ。


ホームルームは、新学期によくある生徒と保護者への配布物と新担任からの挨拶、その他連絡事項を伝えられ1時間ほどで終わった。


「起立。ありがとうございました~。」


号令とともに、皆 一斉に教室を飛び出した。友達と遊びに行く約束をしている人や、ただ早く帰りたい人など。半分以上の生徒が一気に教室から消えていった。カバンに筆記用具をしまい、帰ろうとしたとき遠野がこちらに近づいてきた。


「優弥、お前このあとどうすんの?」


「どう、って帰るけど。」


「俺さ、あいつらとカラオケ行くんだけど。優弥も来いよ。」


遠野の後ろでは、楽しそうに数名の男女が話していた。


「そんなの行くわけないだろ。邪魔になるだけだし。だいたい歌える曲も無いし...」


「黒川さんも来るけど。」


「...い、行きます。」


_____________________


勢いで行くと言ってしまったが、本当に良かったのだろうか。


「フリータイムでいいよな?」

「当たり前だろ~!」


楽しそうでなによりだ。やっぱり帰ろうかな。


「守野くん、こういうの来るんだね。なんか意外だった。」


黒川さんが少し笑いながら話しかけてくれた。


「いや、行かないつもりだったんだけど黒川さ...遠野に強制的に参加させられて。」


危ない。黒川さんがいるから来たんだ、なんて言えるわけが無い。


「そっか。私、歌苦手だからタンバリン叩いてようかな。」


「ぼ、僕も歌苦手だから、聴くだけになると思う。」


「守野くんも歌うの苦手なのか~。じゃあ一緒にタンバリン叩こうね(笑)」


黒川さんとこんなに話せていいのだろうか。

今日カラオケに来たのはこの瞬間のためだと思った。



-数時間後-


「私、皆の分の飲み物入れてくるね。」

「あ、うん。ありがとう。」


...ん?なぜ黒川さんが隣に座っているのだろうか。ほとんど記憶は無いが、確か遠野が気を遣って隣にしてくれた気がする。


そういえば、黒川さんは"皆の分"って言ってたけどそんないっぱい持てないだろう。手伝いに行こう。


部屋を出て、ドリンクバーへ向かうと、たくさんのコップをどうやって運ぼうか困っている黒川さんがいた。


「手伝うよ。」


「守野くん!ありがとう~。小さいトレイがあるからこれに載せて運びたいんだけど...」


2人で協力しながらコップにジュースを注いでいく。


「あっ!!!」


黒川さんが手を滑らせてジュースをこぼしてしまった。


「だ、大丈夫?!制服拭かないと。」


持っていたハンカチを黒川さんに渡した。


「ありがとう。あちゃ~、よりによって、オレンジジュースだ~。」


そう言って、黒川さんはスカートを拭いた。



_____そのとき、見えてしまった。



普段はスカートで隠されていた



太ももにある "痣" が。


「それ、怪我?」


「え...?!あ、これ? これはね...」


少し目が泳いでいた。


「この前、家でぶつけちゃって。結構痛かったんだよね。気づいたら、こんな青くなっちゃって。」


目が合わなかった。

すぐに嘘だと分かった。


だけど、僕は聞けなかった。


"本当は何の怪我なの?"って。



「ご、ごめん。ハンカチありがとう...!

これ、持ってこうか。」


「うん。」



痣の理由が、僕と黒川さんの距離をさらに遠ざけてしまったような気がした。



気がつかなければ良かったのだろうか。


でも、何故だろう。


僕はもっと知りたくなっている。


黒川さんのことが。











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きれいな花は星を仰ぐ 右脳 @050829

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