きれいな花は星を仰ぐ

右脳

第1話 きっかけ

きれいな花を見つけた。


初めて見たときから笑顔が眩しくて、

目が離せなかった。


あのとき、朝が来るまで一緒にいれば、



"『ばいばい。また明日ね。』"



そう言って笑っていた君の手を握っていたら、



この桜を2人で見上げていたのだろうか。


_____________________




4月。新学期。


やわらかな春風と共に、いつもの学校へ向かう今日は始業式だ。


クラス替えに少しだけソワソワしながら、昇降口の貼り紙を人混みの中確認した。


『あ、1組だ。...よし、遠野も一緒か。』


唯一、中学時代から変わらず仲良くしてくれている遠野と同じクラスだと分かり、心底安心した。


だけど、僕にはもう1人、


同じクラスがいいなと願っている人がいた。



"黒川涼花"



1年生のとき、同じクラスで数回話した程度だけど僕は彼女に惹かれていた。


なんなら、遠野なんかよりも先に名前を見つけていた。


『黒川さんも一緒だ...!』


軽やかな足どりで、2年1組の教室へと向かった。


教室の前まで来たとき、


「お!今年も優弥と一緒か!」


急に後ろから肩を組まれた。

この力加減を知らない男はきっと、


「遠野、痛い。重い。」


「あぁ、わりぃわりぃ。」


やはり、遠野だ。

春休みは遠野がサッカー部で忙しくて1度も遊べなかったので、直接会って話すのは久しぶりだった。


「相変わらず冷たいなぁ。でもさ、今年も俺と同じクラスで嬉しいとか思ってるだろ~。」


「嬉しくはないけど、安心はしたよ。」


「それって、嬉しいよりも上ってこと?!」


「声大きい。うるさい。」


相変わらず声が大きい。

けど、こんな根暗な僕と長年仲良くしてくれていることは感謝している。


そういえば、黒川さんはどこにいるんだろうか。

そう思ってキョロキョロしていると、後ろから



「ちょっとごめんね。通っても大丈夫かな?」



黒川さんだ。


がたいのいい遠野が知らぬ間に入口を塞いでいたので、すぐに避けさせた。


「あ、守野くんと遠野くん。おはよう。

今年も同じクラスなんだね!」


「おう!黒川、今年もよろしくな~。」

「おはよう。今年も、よ、よろしくね。」



いい新学期の幕開けだった。



今年は、もう少し黒川さんと仲良くなりたい。



そう思っていたけど、


このときのままで、


この距離のままで、


良かったのかもしれない。










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