第8話:出現―策謀の緑―
ディカブラー王国首都、
ゲーム的にはここがディカブラーという名であり
ディカブラーと言えば基本的にここを指す。
ストーリークリア前…異変が起こっているディカブラーにおいて
プレイヤーは皆ある一点に釘付けになるという…
それが何かと言うと…
▶凪:あれなに?
▶KIYOSHI:何ですかアレ?大根ですか?
▶モミジ:蕪ですね…カブです。
城を押し潰さんとするかの如く鎮座する城に匹敵する大きさの蕪である。
「いやあ…久し振りに見たけどやっぱり圧巻だわ」
「そうだね、俺も初めて見た時は驚いたよ」
「……ん?トシってここ攻略してる時にはまだ居なかったよね?」
楓の記憶が正しければ花恋がトシを連れてきて
エクセレントリビアを代わりにやらせたのは3つ目の国の攻略中だった。
―楓と
故にトシは金策でディカブラーに来た事はあるものの
クリア前のディカブラーは知らないはずなのだ。
「え?…ああ…知りたくなってゲーム機とソフト買ってやったんだよ…5年くらい前かな…」
「……そっか」
何で、とは聞かなかった。
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『この様な格好で失礼する使者殿、私がこの国の王ジャック・ウードゥッコ・ディカブラーだ』
城の前の小さな畑で土いじりをしていたイケオジがそう答えた。
名乗った通り彼こそがディカブラーを統べる王たるジャック王である。
筋肉を否応なしに見せつける土いじりの為のラフな格好が
日に焼けた健康的な肌とマッチして非常に映える。
その上で声優のイケボが付いているので
正に
「昔の洋画に出て来そうなイケオジね」
「……楓ちゃんはこういうのが好みなん?」
「いや別に?」
寧ろどちらかと言えばこんな感じの男性は苦手な部類だったり……
中学時代に特に何もしてないのに
男子に果し状の様なものを叩きつけられた事が複数回あって
そいつらが尽く何らかの運動部所属で
デカい上に筋肉質だったのもあって
その手の男性がすっかり苦手になってしまったのだ。
別に目の前にすると喋れないとかそういう程ではないが。
まあそれは置いといて
ジャック王の話は続く
曰く自分に王位を譲った隠居の先代王が突如『天啓を得たり!!』と叫び、
城の中庭に一夜にして得体の知れない巨大な蕪を生やしたのみならず
ジャック王を城から追放し怪しげな儀式をしているというのだ。
諏訪一大事と義憤に駆られ城に赴き
ハイカヴリウスの使者だと名乗れば
あっさり通されあれよあれよと謁見の間
そこに座すディカブラーの先代王
ノキマ・ウードゥッコ・ディカブラーは受け答えも理知的で
中庭も危険として閉鎖している有様だ
KIYOSHIと凪は困惑している事だろう
私も初見の時に困惑したものだ
ここから導き出される答えはというと…
『申し上げます!ジャック王が隙を突いて侵入!中庭に!』
風雲急を告げる兵士の声
…つまりはそういう事である。
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ノキマ王の先導に従い、中庭を目指し走るプレイヤー一同。
ムービーシーンなので操作しなくていいので大変楽だ…
地味に入り組んでるからねこの城。
―しかしこの先王健脚である、設定資料集で息子に王位を譲った理由の一つが気ままに土いじりしたかったからなどと書かれていただけはある―
中庭に行く道すがら、ノキマ王が語る事によれば
数年前からディカブラー周辺は不作気味であり
ジャック王もそれを気にかけて様々な対策を実行したものの
改善どころか徐々に悪化する始末でジャック王は憂い悩んでいたそうな
そこを何者かに突かれ憑かれたのではないか?とのことだ。
果たしてたどり着いた中庭では
曇天の中視界いっぱいに広がった蕪の前で
ジャック王が高笑いしていた。
『おお神よ!偉大なる収穫者よ!!お納めくだされお納めくだされ!!!そして我が国に豊穣を!!!!』
目は血走り
喋るは祝詞
叫ぶ姿は狂信者
声優さんの怪演が悍ましさに拍車をかける
ついには種の様な物を散蒔いて更に叫ぶ
『伸びよ育てよ豆の樹よ!天におわす偉大なる収穫者に!!この供物を届けるのだ!!!』
瞬間、地面より生えた大樹の如き蔓が巨大な蕪を天へと押し上げた
あれよあれよと言う間に伸びる蔓は、蕪を雲の上まで突き抜けさせた。
数瞬の後、咀嚼音が響き汚らしいげっぷ音が聞こえたと思ったその時
曇天よりそれが落ちてきた
地面に近づくにつれ、よりはっきりと視認できる様になるその姿は
全身緑色をした一つ目の巨人。
轟音と衝撃と共に中庭に落着し、されど何事も無かったかの如く立つ
その巨人こそ、このディカブラー王国に異変をもたらした元凶
即ち…
”
ディカブラーの
イマサラオンライン SAKA。 @sakakakou414
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