第7話:戦闘―ディカブラー周辺の愉快な生物共―

ディカブラー王国の領土に入り首都に近づくにつれまず目につくのは

樹木の如く成長しただろう。


流石はファンタジーの農業国家スケールが違うぜ!

…と手放しで賞賛出来れば良いのだが、そうは問屋が卸さない。

ディカブラー王国に住む人々その辺のモブNPC曰く

こうなったのはほんの数ヶ月くらい前から急にであるそうな

即ち王女様が語った異変に他ならない。

我々はその真相を探るべく、一路ディカブラー王国の王都を目指す。


KIYOSHIと凪はよっぽど琴線に触れたのか

根菜の様な物が聳え立つ巨大野菜の林に釘付けだった

微笑ましいが…確かあそこは……


「ねぇトシ?あそこって確か時々……」


「ん?…あー…そうそう時々紛れてるんだよね


その言葉がフラグになったのかは知らないが

突如巨大野菜の一部が蠢きこちらに向けて移動を開始した

視認遭遇型戦闘シンボルエンカウントを利用した実に巧妙な罠である。


<モンスター出現!>


アラートが鳴り響き、シームレスに戦闘に突入した。

KIYOSHIと凪は初見だったらしく、初遭遇の時のみの仕様

遭遇したモンスター名が高らかに読み上げられる。


<遭遇!美脚人参キャロライン!!>


……その名に恥じぬ美脚。

一昔前に流行ったらしいセクシー大根なるものを思わせる姿をした

見上げるほどに巨大な化物ニンジンは優雅なフォームで我々に襲い掛かって来た。


さあ戦闘の始まりだ!


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エクセレントリビアの戦闘はアクションRPGのそれを採用しており

接近戦攻撃と遠距離攻撃を通常攻撃として実装している他

―職業によっては遠距離攻撃が出来なかったり接近戦攻撃自体は出来るが近接武器の装備に制限が掛かってたりはするが―

当然の様に所謂ローリング回避も使える上にジャンプもガードも出来るし

更にボタンの組み合わせを駆使して最大4つの必殺技と8つのスキルを装備し

プレイヤーの好みに合わせてカスタムする事が可能なのだ。


…とはいえこの美脚人参キャロラインはそこまで恐れる程のモンスターではない

なんなら二人KIYOSHIと凪でも楽に勝てる雑魚モンスターである。

地味にLV20とLV19だからねこの二人、美脚人参キャロライン自体は討伐推奨LV5くらいだし。


…ただし初見時の威圧感と勝てなさ感は異常に高い。

まずゲーム画面越しでも解るとても雑魚とは思えない巨体は見る者を圧倒し

その大きさに見合う―それでもちょっと強い雑魚レベルではあるが―HPを持ち

更にはその巨体がプレイヤーのアバター並みの速さで動くのである、正直怖い。


―初見のプレイヤーがその大きさと速さに驚き逃走を図るもモンスターから一定の距離離れないと逃走した事にならない仕様によって逃げられず、追い詰められたプレイヤーが決死で反撃に出ると割とあっさり倒せて拍子抜けする光景は美脚人参キャロライン討伐あるあるとして語られる笑い話である―


「さて…取り敢えずこっちにヘイト集めよっか」


「え?美脚人参キャロラインだよ?遠距離攻撃で良いじゃんそのまま倒せるし」


トシの言う事も一理ある

モミジとカレンは6年前の最大LV…即ちLV99なので


―因みに現在の最大LVは200であるが…高難易度の試練クエスト達成クリアしないとLVキャップが解放されないので、それをやっていないモミジとカレンはLV99止まりである―


美脚人参キャロラインどころかディカブラー一帯の雑魚なら余裕で倒せる

サクサク楽をして進めるなら出張れば良い……が、だ。


「でもあの二人はこれが初めてな訳じゃん?」


サ終まで半年を切ったエクセレントリビア

遊べる時間はもう少ないとはいえ

高LVプレイヤーにおんぶ抱っこでは二人KIYOSHIと凪はつまらないだろう


「…ああそういう?…でもまあ限度はあるとは思うよ?」


確かに、このまま見てるだけでは初心者が右往左往してる姿を見て嘲る嫌な奴らだ

ちゃんと追いかけてはいるし何時でも攻撃態勢に移れるようにはしてはいるものの

何もしないままでは不信感からのパーティ解散コースだろう、それは避けねば。

この行為は楓の自己満足のお節介に過ぎないのだから。


「…そうね、私の勝手な考えの押しつけはだめよね…ありがとうトシ」


「どういたしまして、じゃさっさと二人を助けに……」


<モンスター乱入!>


「「あ」」


どうやら逃げる二人が別のモンスターと遭遇してしまったらしい。


<遭遇!手袋南瓜クラプキン!!>


その名の如く手の形をしたカボチャの化物である。

ディカブラー周辺に生息するモンスターであるが故に巨体で

特筆すべき特徴としては…硬い。

エクセレントリビアに存在する全モンスターの中でも

上から数えた方が早い破格の硬さを

あろう事かこの序盤に遭遇する可能性のあるこいつが持っているのである。

故についたあだ名が初見殺しだったりする。


―尤もディカブラー周辺のモンスターは地味に大なり小なり初見殺し要素を持ちあわせているモノがほとんどを占めるのだがそこは長くなるので割愛する―


初見殺しとして名高いこの手袋南瓜グラプキンであるが

別にただの理不尽なモンスターという訳ではない。

先ず蔓に繋がっていて行動範囲が狭い為逃げるのが容易であり

そして実は硬いカボチャ部分は本体ではなく繋がった蔓の方が本体であり

蔓自体には防御力が皆無である為、

それを知っていればいとも容易く倒せるからである。


―因みにカボチャ部分は硬いが破壊可能ではあり、破壊した場合は高額で売れるアイテムを確定でドロップする為、一時期は絶滅するんじゃないかと思われるくらいに高LVプレイヤーに乱獲されていた悲しき過去もあったりする―


ただ初心者である二人KIYOSHIと凪はそんな事知らない訳で……


「どっち行く?」


「じゃあ俺カボチャの方で」


「ニンジン了解」


LV99の経験者二人モミジとカレンの介入により、戦闘はあっさり終了した。


その後のKIYOSHIと凪への謝罪の方が―主に文字を打ち込む速度のせいで―時間が掛かったくらいである。

…急に謝ったので困惑させてしまったのはご愛敬という事でどうか一つ……


そんな戦闘を乗り越えて、進む4人の今更たち


ディカブラー王国の首都はもうすぐである。

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