遊牧民族・魔法少女
一ノ瀬と共に臨場感の欠片もない『契約・解除』を繰り返していく内に10階層の攻略が進んでいった。
「えっとここを右に曲がると……あ!あれはレッドドラゴン……!!」
するとそこには圧倒的な巨体を誇るレッドドラゴンがいた!迫力だけで気圧されそうになるものの、まだ気づかれていないようだ。
ドラゴン……なにげに見るの初めてだな。
グランは保護者の目線で後ろから俺達を見ていた。
「レッドドラゴンか。今度も『
…………おかしい。またいつまで経っても通知音が来ない。
いつの間にかレッドドラゴンは食料を見るような目でこちらを見ている!
「ガオオオオオオオオオオオオ」
「…………ッ……!!」
地獄から響くような腹の底からの鳴き声に一瞬ビビって足が竦む。
ちょっと待って欲しいッ!!
「ギャアアアアアアアアアア……ドォン!!」
やばいッ!!俺達の方に向かってドラゴンが物凄いスピードで巨大な爪を振り落としてきたので、一ノ瀬をグッと引き寄せて回避する。
「完全に殺しに来てるよな……怪我無いか?」
「ありがとう凛、ただ大丈夫。ボクに任せて!『白馬化』」
すると突如出現する小柄な白馬。
この中世的魔法はam、pmに関わらず12時になりさえすれば自動で解除されてしまう魔法らしいのでちょっと不便そうだ。
パカッパカッとあまりファンタジーで聞かないオノマトペを生じさせる白馬。
一ノ瀬はそう言うと、白馬に乗りながらリュックから矢と弓を取り出してレッドドラゴンに向かっていった。
「これでも喰らえッ!!」
一ノ瀬はなんと両脚で白馬を挟んで片側にぶら下がり、白馬の身体を盾にして、その腹の下から矢を放つ!!
いや遊牧民族の戦い方ッ……!!その中世要素要るのかッ!?
ちょうどそれが目にも止まらぬ速さでドラゴンの肩に刺突した。
「ギャアアアアアアアアアア」
ドラゴンは怯んでいるようだ!……このまま実況してるだけでいいんだろうか!
ともすれば一ノ瀬は持っていた全ての矢をドラゴンに的中させた!
ドラゴンはもう完全に弱っていた。
あとはトドメを刺せば、晴れて襲われる事は無いだろう!
「『髪を長くて丈夫にする魔法』」
いちいち魔法名が長い。やっぱり中世的というフワッとした概念からくるものなのだろうか。この魔法は確か寓話にて塔の上から脱出するときに使われたモノ!!
ショートヘアの一ノ瀬の髪があっという間に長く頑丈になっていく。
それを自由自在に一ノ瀬は操る。ドラゴンの首に頑丈な髪を括り付けると、圧倒的な空間の機動力で一直線にドラゴンの胴体に向かっていき、鉛の様な重さを思わせる蹴りを叩き込む!!
ドラゴンも負けじと一ノ瀬の居るところにド迫力な爪を振るうが、もうそこに一ノ瀬はいない。首に括り付けた髪を支点にして背後に回り込んでいたからだ!
「ドゴンッ!!」
強烈な一撃を竜の後頭部に叩きつけると、竜はたちまち前に傾いていき最終的には物凄い音を立てながら地面と激しく衝突して霧散した。
『レベルが上がりました。』
『レベルが上がりました。』
『レベルが上がりました。』
「恐ろしい子じゃのう」
「…………ッ……」
「凛。大丈夫だった?」
大丈夫だったもなにも無いだろ!A級冒険者がパーティーを組んで倒すレベルの強さを誇るドラゴンを一人で討伐した……これは凄まじい事だ。
なんだろう……この感情はッ!!……恐怖ッ!!
「ああ……ありがとう。一ノ瀬。」
ちょっと気が重いが感謝の念を伝える。
いや嬉しいけど……
「どういたしまして!」
一ノ瀬はパァっと笑顔になり、いつもの可愛いい表情を浮かべる!
これはもう怖くなんてないに違いない!
「今日はここら辺にしようか。これ、保険でつけてるけど春先にマフラーちょっと合わないから首輪はずして……」
「ええ……どうしよっかな?冗談だよ。」
そう、中二病マフラーも季節には逆らえないのである。
『最近、原因不明のレベルアップに悩まされている。』 善良トネガワ @netauth01
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