第8話

「あの銀二が勝った先輩って、凄い人だったんだね」


「ああ、ランキング三桁だったらしいぞ?」


「すごーい(棒)」


「すごい棒読みだな」


 俺らは、銀二を抜いた、4人でダンジョンを探索していた。


 クラブを作ったが、作る前に、組まれていた決闘により、銀二は未だに、決闘に備えて、体力を温存している状態だ。


 そして今は、千里と会話をしながら、2階層のウルフを千里が、”念動力”で倒しているところである。


 あー、ウルフが三体こちらに向かって来たが、こちらに近づく前に、ウルフの足が地面から離れた。


 そのまま、ジタバタしているウルフを地面に叩きつけた。


 即死二体に、瀕死が一体となり、瀕死の方へは、信吾が槍でトドメを刺していた。


 最初の時に比べて、モンスターと戦うことに、慣れてきたみたいだ。


 それに、信吾は、槍を使ったことがあるのか、中々様になっており、普段から、稽古をしているのが、よくわかる。


「……あの、風荘颯って人、……能力は、風化だって、……聞いたよ」


 ウルフにトドメを刺して、魔石を確保してきた、信吾が言う。


「風化って、空気にさらされて、くずれた後は、土になる奴だよね?」


 千里が、キョトンとして、聞いてきた。


「ああ、それで視覚から消えたり、していたんだろうな、攻撃手段は、土、か?」


 俺の言葉に、千里は一度納得しかけたが、攻撃に部分では、また「?」になったようだ。


 んー、土かぁ、もっと強力な隠し玉が、隠されていそうだな。


「……うん、土になって、……攻撃するのが、……常套手段みたい」


 俺の言葉を、肯定するように、信吾が、言う。


「…とりあえずは、目の前の敵を片付けることが、先決だな」


 今度は、五体のウルフたちが、向かってきていたが、先程と同じように、地面に叩きつけられて、倒されていった。






 俺たちは、ダンジョンから帰ってきた後、魔石を換金し、四人で分配した。


 ウルフの魔石は、一つで二〇〇円なので、八〇個で一万六千円となる。


 ゴブリンよりいいが、それでも少ない。


 少ししたら、銀二も来れるようになるため、それまで、深く潜ることは、止めた方がいいだろう。


 そう、話し合いで決めた後は、皆と別れて帰宅した。


「「ただいま」」


 部屋着に着替えて、ソファーに座ると、千里が、脚の間に座ってきた。


 すっかり、俺らの定位置となっている。


 こちらからは、千里の顔は、見れないが、何か考えているようだった。


「何か、考え事?」


「……うーん、……」


 歯切れが悪い、答えが返ってきたので、もう一歩踏み込んでみる。


「俺には、言えないことか?」


「……そんなことないよ」


「無理して、聞くつもりはないから、話たくなったら、言ってくれ」


 ここで、話は終わりというように、違う話題を言おうとしたが。


「……やっぱり言うよ」


 千里がそういうので、聞く体制に入る。


「実家からね、よくない情報をもらったの」


 俺は、自分の眉間に皺が寄っているの自覚するが、続きを促す。


「どういった?」


「『反能力者集団が、活発になってきているから、気を付けなさい』って言われたの」


 頭の中で、色々な組織が浮かび上がるが、そのどれもが、該当しそうで、絞り込むのは難しかった。


 おそらく聞いてはいないだろうが、問いかけてみる。


「具多的な組織名は、聞いた?」


「ううん」


 そう言って、首を振る千里。


 やはりか、という思いもあるが、それだけ、相手が強大である、可能性も出てきた。


 先ほどのリストから、中小組織を除く。


「……あ、がどうたらって言って気がする」


 その言葉に、リストから、に、該当しそうな組織を洗いだすと、候補は三つに絞られた。


「……蛇、か、もしだった場合は、少し面倒になるな」


 大蛇は、その名の通り、大きな蛇に変化可能な能力者が、率いている組織で、最大体長三十メートルにもなれるため、一瞬で、学園など踏みつぶされてしまう。


 反能力者集団と、名乗っていても、その実態は、犯罪組織と変わらない。


 中には、能力なしの集団もあるが、そちらも厄介で、記者や政治家が多く存在し、世間を斡旋することに、長けているため、下手なことが出来ない。


 これに対抗するため、十家などが存在するが、こちらも権力争いが存在し、まとまっているとは決して言えない。


 反能力者にとっては、犯罪組織だろうが、十家だろうが、能力者に一括りとされてしまうため、能力者にとっては、少し生きづらい世の中かもしれない。


「……いつまでも、楽しく過ごせればいいのにね」


 哀し気に言う、千里に。


「大丈夫、もしもの時は、全て消して、もう一度、最初からにすればいい」


 頭をなでながら、言う俺に、千里は振り返りながら、笑いかけてくれた。






「おはよう、銀二、どうだった?」


 俺は、朝早くに登校していた銀二に、確認する。


「おう、おはよう、灰斗、ばっちりだぜ」


「何の話?」


 一緒に来た、千里には、話が見えないのか聞いてくる。


「この後の学年対抗戦に、向けての秘策だぜ、な? 灰斗」


 銀二が、こちらを見て、確認を取ってくるので、頷く。


「ああ、やるからには、勝ちに行きたいからな」


「いつにもなく、やる気だね、灰斗」


 俺の言い分に、千里が、茶化してくる。


 事実であるので、反論できない。


 ただ、こちらにも言い分がある。


「この前、先輩に絡まれたからな、少しは頑張らないと、また絡まれる」


 そう言って、周囲を見渡すと、目を逸らすクラスメイトの姿が、あった。


 あの先輩以外にも、見た目が可愛く、コミュ力が高い、千里は人気があり、俺が、彼氏だと言ってるのに、アプローチする奴が後を絶たない。


 ここらで、見せしめが、必要だと考えたのだ。


「えへへー、彼氏は大変ですね」


 ニマニマしてくる、千里をなるべく見ないように。


「ああ、そうだな、彼女さんが、余りにも可愛いから、皆ほっとかないんだ、当然一番ほっとかないのは、俺だけどな」


 チラッと、千里を見ると、顔が赤いのは、見間違いや、目の錯覚ではないだろう。


「……か……かわいい……はいと、も……かっこいいよ……」


 スカートの裾を掴んで、俯きながら、もじもじしている千里の可愛さに、理性を抑えながら、言う。


「千里は、誰にもやらん」


「灰斗もね」


 ”きゃー”などの発言や、”涙を流す人”がいた気がしたが、気のせいだったかもしれん。


「二人の空間で、イチャイチャしてないで、席着こうぜ、さっきから兵頭先生がこっちを睨んでいるぞ」


 そちらを見ると、確かに鬼の形相で、睨んでいたため、そそくさと席に着くことにする。


 その日の夜は、つい盛り上がってしまったが、何がとは言わん。

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能力が強すぎる主人公と彼女 ミネラル @mineral0202

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