アルケニー・プロファイル2【カクヨム版】

釣ール

化物人間

 糸で飛んでやってきたどこかの国。

 ディストピア化が進んでいるのは本当らしい。


 独自の意味不明なルールに苦しめられる。

 その余波が俺たちクモにも適応されてしまう。

 人間は弱いのだな。

 もちろんクモである自分たちも。


 急ごしらえで作った巣に水滴すいてきがたまる。

 それを飲んで酸性雨っぽさを感じ、生きるためだと思い込む。


 自分たちは人間に全てを管理される。

 保護をされるかも駆逐くちくされるかも人間の胸三寸むねさんすん


 生きててよかったと思わないのは人間だけではない。

 それを人間に教える必要はない。


 網にかかる獲物のことだけ考えてればいい。

 お前たち人間もそうやってわかって気になっている。


 糸の成分やクモたちの生態はお前たちの発展のために犠牲にはならない。


 たった一匹に何が出来る。

 昔はそう思っていた。


 異性に食われるために存在する遺伝子に逆らえない苦痛さをお前たちに知らせてやりたい。


 ただ理不尽だけだと分かっていながら巣を作り、獲物を待つ恐怖を…必ず教えてやる。


 いや、きっと自分という一匹だけしか思っていないかもしれない。


 他のクモはもうこの生態系に慣れてしまってる。

 産まれてしまったことに自信があるやつなどいない。

 そのまま生をまっとうするだけ。


 ああ、なぜこの世はゆがんでいるのか。

 自分が人間だったとしてもどうにも出来なかっただろう。


 この世にあるのはいつも隠すことが出来ない野心のみ。


 今日もお前たちにまぎれて身の丈にあった獲物を網で包んで牙を立てる。

 それだけだ。

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