第4話 ダンジョン攻略配信で心が折れるロリ魔王様

 わしは今、魔界が誇る迷宮ダンジョン『ラビリン』を訪れていた。


 浅層を形成するのは魔界樹とそれに擬態したフォレストン達。この階の最奥の宝箱には、確かフレアソードを入れたはずだ。


 いつでも勇者や冒険者を迎えられるこのダンジョンのライブ配信。それが今日のわしの仕事だ。


「――――皆の者! マオリン降臨である! 今日は記念すべき初ライブ配信。紹介するのは無限に続くエンドコンテンツのラビリンだ! わしが直々にここの攻略方法を紹介していくから皆も是非魔界に来て楽しんでくれ! ……では早速行くとしよう!」


 アルクを従えダンジョンを進んでいく。

 魔物達には忖度なしでわしに襲いかかるように言っているため、次々とフォレストンの木の葉ファンネルと木の槍が飛んでくる。


 それらを軽やかに躱し、または護法結界で弾きながら足を進める。


「――と、フォレストンの主な攻撃方法は葉と根だ。火炎魔法で焼き払うか、このように適当にあしらっておけば問題ないぞ」


 流石にわしから攻撃することはしない。むしろ大事な部下達の成長を確かめる良い機会だ。


(ふむ、個々の力は中々だ。それに連携と連撃も申し分ない。あとは防御手段と攻撃のバリエーションにもう一声といったところだな)


「むっ?『ロリコン下僕』よ、赤スパ感謝する! ……なになに? マオリンつよ可愛い? ふっ、当然であろう! わしは魔王ぞ?」


 アルクが向けるノートパソコンの画面に表示された文字。それを見ながらフォレストンの攻撃をあしらう。


「ドヤ顔もキュートか。当然であろう! ……おっと、危ない。だが効かん! わしはつよかわ魔王のマオリンだからな! くひひひひ!」


 コメ欄に流れる賛美の嵐。

 それについ気を良くし、目を瞑りながらフォレストン達の攻撃を躱していく。

 

 だが次の瞬間――――。


「ふぎゃっ⁉︎ 根っこが足が引っ掛かって…………ま、待てお前達! タイム! タイム‼︎」


 不意に足を取られ転んだわしにフォレストン達が一斉攻撃を仕掛けてきた。

 確かに忖度なしと言ったが本気で殺しにきている。


「のわああああああっ‼︎」


 舞い上がる土煙とともに、わしの悲鳴がダンジョンの中に響き渡った――――。





「――――と、今回わしが見せたのは悪い見本、反面教師というやつだ。もちろんわざとやったに決まっておろう。なに? 必死すぎて草? メスガキ雑魚魔王? …………ふ、ふふふ、好きに言っておれ。わわわわしは余裕と気品に溢れた最強つよかわ魔王だからな。配下の言葉に怒ったりせんわ」


 なんとか無傷で生還したわしは、画面に流れるコメントに目を通していた。


 わしの無事を喜ぶ者が大多数だが、中にはわしを馬鹿にしたようなコメントも散見している。

 だがこの程度に怒るようでは魔王としての面目が立たないだろう。


(落ち着けわし。わしとてここでムキになるほど子供ではない。大丈夫、わし強い子)


「………………それでは今回はここまでにしておくぞ! 次の配信は…………ま、また違うスポットでも紹介しよう! 決してダンジョン攻略が嫌になったとかではないからな! 勘違いするなよ配下達よ‼︎ ではな!」


 別れの挨拶とともにカメラが止められる。暗転した配信画面は配下達の「ではな!」というコメントで埋まっていく。

 それらを最後まで読み、わしは配信を終了した。




「初めてのライブ配信お疲れ様です。実に見応えのある内容でしたよ。流石は魔王様です」

「ふ、ふん! 分かってると思うがアレは配信を盛り上げるための演出だぞ? もちろんお前は分かっておるだろうな?」


 視線を上げ、ノートパソコンをわしに向けているアルクを睨み付ける。


「ええ、当然です。それにしても迫真の演技でしたね。あの時の慌てふためいた表情、例え演技だとしてもご飯10杯は余裕で食べられます。むしろあそこだけ切り抜いてループ動画でも作っていいですか?」

「お、お前絶対信じておらんだろ!」


 屈辱だ。確かにさっきはほんの少し焦ったが見ての通りダメージはゼロ。慌てて謝ってきたフォレストン達にも「心配いらぬ。それより良い攻撃だったぞ」と激励の言葉をかけたくらいだ。


「あ、それはそうと魔王様。先ほどの配信のスパチャ、かなりの金額が入ってますよ? いっそダンジョン配信チャンネルに路線変更するとかはどうですか?」


 にこやかに進言してくるアルク。だがその瞳の奥に意地悪めいた光を見たわしは、遠くを眺め呟いた。


「…………もうやだ」




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ロリキュートな魔王様は人気配信者になって世界征服を目指すようです @nizinopapa

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