第16話
状況の変化はそれほど待たずして訪れた。
それは、私が有り余った魔力を使って、この雪に閉ざされた空間を快適に作り替える事に注力していた時のこと。
私は、『カマクラ』というもっと寒さの厳しい国で作られる簡易的な野営拠点を参考に、十分なスペースを確保した雪の納屋のような物を作っていた。
フランを雪兎の毛皮の上に寝かせ。そのすやすやとした寝顔を見ながら、雪の納屋を聖術を駆使し作り上げていた。
刻印を作る時にも感じていた事だけど、私はモノづくりが楽しく感じるようだった。
そのままもう少しで完成! というところで、外から大声で呼ばれていることに気がついたのだった。
「リタちゃん、フランちゃん、この中にいるのかい! 無事なら返事をしておくれ!!」
必死さを隠そうともしていないトムじいの真剣な声が響いている。
荒い息を吐き、呼吸が厚い雪の壁を越えて伝わってくるようだった。
そして感じる魔力の高まり。
魔法が構築される気配がした。
「すまないが、急を要している。壊させてもらうよ」
もちろん私はその魔法を──かき消した。
「…なにっ!?」
「壊さないで、扉ならあるから」
私こだわりの品を壊されるわけにいかない。
この扉だって、氷の強度を高め加工し開閉式の扉を作ったのだ。
そして対面したトムじいは、肩で息をするほど呼吸を乱し、白い息を量産していた。
「リタちゃん……無事で本当に良かった」
「ん、フランも無事だよ。それでどうかしたの?」
本気で心配してくれているのが伝わってくる。だからと言って全面的に信用できるかと言えば否。
私は余計なことは言わず、聞き手に回ることにした。
「実はね、この近くに魔獣が出たんだ。だから急いで2人を町に戻そうとしたんだが、探しても見つからなくてね」
まさに心臓が凍るような気持ちだったよ。
そう言ってトムじいは胸を撫で下ろした。
(イトラ、嘘の気配する?)
(いいえ、『嘘は』ついてないわよ)
イトラは含みのある言い方をする。つまり、何かあったのだ。
それが分かっただけでも今は十分。
「そうだったんだ。なら町に戻ろう。フラン起こしてくる」
扉に背を向けフランの元へ歩き出して。
「あぁ、リタちゃん少し待ってくれるかな。実はリタちゃんたちを探していた時……その魔獣の死体を見つけたんだ」
歩き出した足が止まる。
なるべくなら知られたくなかったけど、隠すことなく堂々と放置してしまったのだからしょうがない。
正直いつまでも隠し通せるとは思っていなかった。
「
空と青と眠り姫 @rinon1007
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