ご近所さん
笹野屋 小太郎
第1話
今日もまた楽しそうな声が聞こえてくる。
ご近所さんは、お父さん、お母さん、息子さん2人の4人家族。
お父さんは勤務している会社の重役らしく、お歳暮やお中元の時期になるとかなりの品物が届く。
ご近所さんのよしみで私もおすそ分けをしてもらって助かっています。
お母さんは今は専業主婦ですが、英語が堪能で昔は通訳業をされていたそうです。今は家でできる翻訳の仕事をしています。
息子さん2人は県内一の高レベル進学高校の三年生と一年生。
長男は人あたりがよく、いつも周りに友達がいて慕われています。
次男は幼稚園、小学、中学と常に学年トップで、高校では全国ベスト10に入る頭脳を持ち真面目で誠実な人柄です。
お父さん、お母さんは自慢の息子たちだとよく皆に話しています。
ご家族は仲が良く休日には旅行をしていました。息子さん達がまだ小さい頃は、私も誘われて一緒にお出かけしたこともあります。
そんな羨ましいご家族でしたが、息子さん達が有名私立大学に入学し、この地を離れるとそのままあちらで就職し、それぞれに新しい家族が出来ました。お嫁さんと孫を連れて来るのも年に一回それも数日だけです。
大好きな息子といたい年老いてきたお父さん、お母さんは息子達にこちらに帰ってきてくれないかと頼みましたが、いい返事は返ってきません。
お父さん、お母さんは仕方なく娘に居てもらうしかないと話しています。自分達の面倒を見てもらわなければと。
その話を聞いて驚きました。私が知っている限りで娘さんがいたことはなかったからです。息子さん達は小さな頃から知っていますがそこに娘さんはいたという記憶がありません。
寂しさのあまり、娘という幻を作ってしまったのでしょうか。
心配になり二人を見ると、私を見ていったのです。
「頼むよ、娘」
ご近所さん 笹野屋 小太郎 @AotoSorato
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