第4話 如月凛香と愉快な仲間たち
私にも決して友達がいないわけではない。
長きにわたるイメージトレーニングがついに実を結び、入学2日目で3人の友達を作るという快挙を成し遂げた。
かつての私はもういない。これからはキラキラ女子高生として生きていこう......!
「あっ!もう学校来てる。凛香ちゃんはいつも早いねぇ」
しょうもない妄想をしていると、後ろから透き通った声が聴こえてきた。
「千春ちゃんだって相当早いよ。見た?C組なんてまだ誰も来てない」
彼女の名前は
時雨さんとは対照的に、真っ黒な髪を低めの位置でポニーテールにしていて、瞳は琥珀のように輝いている。
私が新しい学校でぼっちにならずに済んだのは、内部生の彼女が仲良くなってくれたことが大きい。
「そういえば、凛香ちゃんはもう入りたい部活とか見つかった?すごい悩んでたけど」
まずい。この話題は避けてたのに。
秘密新聞部に入ったなんて言ったら、私まで変人扱いされてしまう。
そうなったら私の青春は終わりだ。貴重な高校3年間をドブに捨てるわけにはいかない。
「それがまだ決まってなくてさぁ......千春ちゃんは何部に入ってるの?」
「秘密新聞部だよ」
思わず椅子から転げ落ちた。教室に私たちしかいなかったのは不幸中の幸いかもしれない。
「急にどうしたの!?凛香ちゃん」
私は喋る前に色々と考え込んでしまうタイプだった。会話のペースが人とズレていると言われたこともある。
しかし、この時ばかりは違った。
頭の中に浮かんだ言葉が、一瞬のためらいも無く口から出てしまった。
「こっちが聞きたいわ!!!!!」
「えぇ!?」
お互い混乱していたので、私は昨日までに起こった出来事を一通り説明した。
「へ〜大変だったんだねぇ」
あんまり驚いていない。正直意外だった。
心が読める先輩も、ひとりでに動くぬいぐるみも、彼女にとっては日常でしかないのだろうか?
この不可解な感覚を共有できないというのは、ちょっとだけ寂しい。
「あの、純粋な疑問なんだけどさ......千春ちゃんはどうしてあんな部活に入ろうと思ったの?言っちゃ悪いけど、変だよあそこ」
千春は少し悩むような仕草を見せたが、やがて顔を上げ、こう言った。
「面白いから、かな」
いつになく真剣な表情だった。真面目な顔で突飛なことを言われるとこっちも反応に困ってしまう。
「え、面白いかなぁ」
「面白いよ!」
千春は食い気味に答えた。
「うちの学校ってけっこう謎が多いんだよ。隠し通路とか、地下遺跡とか」
「やばいじゃん!?混沌すぎるよ、違法建築とかそういうレベルじゃないよ」
本当にこの学校に入ってよかったのか。今になって不安になってきた。
「私の家、割と厳しくてさ。だから......せめて高校生活くらいは全力で楽しみたかったんだ」
「他にも良い部活あったと思うんだけどなぁ」
※
一応今日も秘密新聞部の活動日ということで部室に行ってみると、時雨さんと有馬先輩がチェスをしていた。
意外にも時雨さんが勝っているようで、駒を動かすたびにガッツポーズをしている。
「あら、遅かったじゃない。クッキー食べる?マリアが持ってきてくれたのよ」
時雨さんはチェス盤の隣に置かれたクッキー缶を差し出して言った。
「マリア?」
「気にしないでいいよ、時雨しかそう呼んでる人いないし」
すかさず有馬先輩が答える。
「油断したわねマリア!チェックメイトよ!」
「うわ、ずるい!」
有馬先輩はチェス盤を片付けるとホワイトボードを部屋の隅から運び出し、今日の活動内容を書いていった。
この間に千春も部室にやってきた。
一方時雨さんは優雅にクッキーを食べている。全くいいご身分である。
「さて、皆集まったことだし。今から秘密新聞部の一大プロジェクトについて説明するわ。その名も!!オペレーション・テミス!!」
言い終わると同時に有馬先輩が作戦名を書き終えた。
「かっこいい〜!どんな作戦なんですか?」
千春は興味津々の様子だった。いつの間にかペンとメモ帳まで持っている。
「ふふ......よくぞ聞いてくれたわね。この作戦の目的はたった1つ。来月行われる生徒会役員選挙で、
「え?大隈ってもしかして......」
私がそう言った途端、部室の扉が力強く開いた。
「あーしをどうするって?秘密新聞部!!」
青い髪を
何しろ昨日会ったばかりなのだから。
「ごきげんよう、花恋さん。とりあえず......クッキーはいかが?」
秘密新聞部の超常的スクールライフ おもち丸 @snowda1fuku
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