静かな洞察と深い共感が織りなす、人生と社会へのやわらかなまなざし。

一連のエッセイは、まるで心の奥底を覗き込むような静謐さと、鋭い知性に満ちています。
日々の喧騒や混迷の中で見失いがちな「本質」や「真理」を、決して押し付けることなく、やわらかく、時にユーモラスに問いかけてくれます。

戦後から現代までの日本の変遷、個人と社会の葛藤、学びの本質、そして人生の散歩道を、まるで川が大海へと流れゆくように、自然に紡いで「わかったつもり」の危うさを自覚しながら、わからなさを抱えたまま前に進むことの尊さを教えてくれます。

無用の用の章で、なぜか『最後の授業』を思い出しました。
フランス語教師アメル先生が教え子と村人に語った「フランス語は民族の魂である」という言葉に象徴されるように、
「言葉は民族の魂」であるならば、無名の人さまの描かれた緩やかな肯定そのものが、
日本人の魂を表しているのではないかと感じました。

「学ぶとは、本能のままに不思議がり、知でさまようこと。

生まれてきたのなら、不思議がって、さまよいなさい」

目的なき知の旅を、続けて楽しんでいきたいと思います。

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