あとがき 病者の矜持
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
市川沙央さんに文章を読んでいただける機会があるなら、と忘れられない黒歴史を引っ張り出してきました。明らかに市川沙央さんを意識した内容と思われるかもしれませんが、僕は生まれついてからずっと病とともにあり、病と無関係なエピソードを探す方が難しいです。もちろん、審査員に市川沙央さんがいるからこういった内容を書けた部分はあります。他のところに出していたら、それこそ、僕の痛みも知らない人から退屈な説教をぶつけられたかもしれません。それは面倒かつ嫌です。
病者であればこそ、矜持はどんどん奪われていきます。何かができる、できたという実感を得られる機会が少なかったり、行動に制限があったりするからです。
僕は特に一人でできることに喜びを感じ、誰かに頼ることを惨めに思う気質が強いです。それゆえに人と行動しなくなりました。人と一緒にいると、一人のときより自分が病弱で心配をかける存在だと痛感するからです。一人であれば、不便さもあるけれど、自分で何とかできた実績が積み重なっていきます。
そんな僕が思うのは、できないことが多い病者から、自分の病や痛みをどう扱い、どう表現するかの決定権を奪うのは、矜持を奪われるに等しいということです。
だから、僕はあの黒歴史を配慮や倫理観のなさの観点から批判する意見を受け入れることはありません。知識のなさについては、猛省していますが。
僕が今こう考えるためには、あの黒歴史も必要な痛みだったのかもしれません。二度と味わいたくないですが。
知識をつけ、わからなさに真摯な自分でありたいです。
それではまた、どこかで。
僕は世界を異にする 染井雪乃 @yukino_somei
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