第2丁
あれから、僕達は一言も会話をすることなく昼休みの時間がきた。
彼女は、友人と昼食をとるために席を離れていった。
僕も、と言いたいところだが生憎僕には一緒にお弁当を食べ談笑できる友達がいない。
ちなみに未だ、ハサミは返されていない。まあ、いつものことだ。そうして僕は教室をでて、校庭の大きな木の下にあるベンチでお弁当を膝の上に置く。いつもここは日が当たらないから誰も来ない。つまり絶好のひとりぼっちスポットなのである。
「いただきまーす」
一人でも、親や世界にしつけられた癖は抜けずに様々な生命に感謝する。そして、箸を持ちまず一番最初に食べると決めているトマトを上手く掴み口に運ぼうとしたそのとき。
「……小沢、」
「ああああ!!!」
とっさに後ろを向くと金霧さんがいた。でも今、僕はそれどころではなかった。
「トマトががあああああああああああああ!!!!」
ここは湿気が多く、土も湿っていて虫も沢山いる。つまり、トマトがおじゃんになった。
「なんか、ごめんな」
「い、いや!いいよっ、ただのトマトだし……」
全然良くない。トマトを返してほしい。そう思いながらもう一度金霧さんの方を向いた。はずだったのに。
――――――誰?
「え、えっとだ、誰?」
「ハサミ、ありがとう。あと金霧鋏香だ。」
髪の毛がバッサリいかれていた。腰くらいまであったはずの髪の毛が肩に付くかつかないかギリギリの所にいる。
「ええ!?」
僕が驚いていると、金霧さんは真顔のまま首を傾げていった。
「髪、切るって言ったじゃん」
「……………………ふぁ。」
その瞬間、朝の会話がフラッシュバックした。そっちの髪?ペーパーじゃなくてヘアー??
思わず変声期を終えた僕とは思えないほど声が高くでてしまった。
「サンキュ、おかげでさっぱりしたわ。」
金霧さんが短くなった髪の毛を指で遊びながら、話している。僕の頭は今宇宙だ。
「ああ、お弁当食べていたのか。私もう帰るから食べてもらっていいぞ。」
そう言って方向を変え、昇降口にむかって歩いている金霧さんは、何処か格好良かった。
ーーーーーー紙と髪ーーーーーー
鋏を拝借 風邪 @Kaze0223
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