第49話 ダンジョン交易

 ヒケンの密林の主であるスキュラのツツジが、ゴブ太をリーダーと認めてしまった以上、この森の魔物で反対出来る者はいない。

 それでも、ゴブリンを甚振り、虐げ続けてきたオークやオーガには抵抗が強く、従順なものだけをダンジョンに受け入れることに決めた。残りの厄介者の処遇は、ゴセキ山脈の麓にある一角を棲みかとして供給することで、暫定的な対応も完了した。竜種達の縄張りの近くともなれば、大人しくするしかないだろう。


「マリク、階層に合わせて魔物達を振り分けてくれ。3階層まではゴブリン主体、3階層からはオーク、4階層からはオーガ。それぞれ魔物の責任者は、第13ダンジョンの最下層に居てもらう」


「ツツジは、どうします? ゴブ太に引っ付いて離れませんけど?」


「あれは……好きにさせてやれ。でも、表には出すなよ」


「ダンジョンの機密事項ってヤツっすね」


『A5エリアより、緊急連絡。第11ダンジョンを名乗る黒子天使の集団が現れました』


 落ち着けるはずたったが、地上に展開していた監視部隊からの、突然の報告が入る。


「何だって、ダーマさんの第3ダンジョンの間違いじゃないのか?」


『違います。第11ダンジョンです。事前連絡はしているとのことですが?』


 慌ててメールを確認すれば、新着メールが届いてはいるが、届いたのは5分前。到着前ならば事前連絡にはなるかもしれないが、すでに行動は開始され、こちらが事前準備する時間を与えてくれない。


 しかも現れたのが、第11ダンジョンの黒子天使。第13ダンジョンから一番近いダンジョンは、ダーマさんの第3ダンジョン。第11ダンジョンとなれば、一番離れた場所になる。


「ああ、連絡は来ているとなるのか。ダンジョン前まで案内してくれ。まあ、案内しなくても辿り着くだろうがな」


 緊急を告げる黒子天使の奥に見える、不気味な笑みを浮かべる第11ダンジョンの黒子天使。

 その先頭に立つのは、熾天使ノエインに寄り添う、曲者の司令官ベルフォル。迷いの森に侵食され、迷路と化した森に惑わされることなく、最短で辿り着く探知スキルに長けた黒子天使。


 普通ならば隠密行動を取り、行動を秘匿する。ダンジョンの活動が窺い知れることは徹底的に秘匿しなけれぱならないが、馬車を引き連れ隊商をなしている。

 アイテムボックススキルやマジックバッグはあるが、敢えて周囲に見せつける行為を取っている。





「第11ダンジョン司令官ベルフォル、我が主ノエインの親書を届けに参りました」


 不敵な笑みを浮かべつつ、ベルフォルがマジックバッグの中から取り出したのはノエインの親書。

 普通ならば、親書は機密事項。幾重にも結界が張られるが、封がされただけの手紙が出てくる。馬車を引き連れ、森の中を進んできたとは真逆の行動をとっている。


「親書は、マジックバッグなのか?」


「親書といえど荷物。少しでも軽いにこしたことはありません。重要なのは形式より、実務ではありませんか?」


 親書を渡すと同時に馬車の幌を外せば、そこから出てくるのはミスリル鉱石。


「我が主ノエインは、第13ダンジョンとの交易を望んでおられます」


 馬車を引き連れきたのは、交易時に輸送が可能であるかを確認するため。交易を断られるとは、さらさら思っていない。


「大した自身だが、出来たばかりのダンジョンの俺達に何を求める?」


 基本的にダンジョン間では、序列争いを繰り広げている。競争相手であり、基本的に表だって協力することはあり得ない。あるとすれば、互いにウィンウィンの関係が成立する場合のみ。


「我が主は、第13ダンジョンから出土する遺品に興味を示しておられます。滅びた時代のアーティファクトとに繋がる可能性があり、朽ちた石像の欠片さえミスリル鉱石と同等以上の価値がある。互いにウィンウィンではありませんか?」


「このダンジョンのガラクタが、第11ダンジョンの価値を高めるとは思えないが?」


「それは、我が主が決めること。ただミスリル鉱石は、価値があるのではありませんか?」


 ダンジョンの得りとなるものは、アジノミ草とサプリのみ。しかし、価値観を破壊するサプリを大量に表には出すわけにはいかない。


「ドワーフは酒造りも得意ですが、如何ですか?」

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経営破綻したダンジョンから始まる、俺と幼馴染み熾天使の快適生活 さんが(三可) @sanga3

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