第23話

 料理を作ると言っても、熊肉を美味しく調理する技術を俺は持っていない。

 牛肉や豚肉なんかと違ってどう考えても癖のある熊肉に素人が手を出せば、碌なことにならない未来しか見えない。

 ならばどうするか、答えはひとつだ。

「よっと。いでよ、ジャガイモ」

 ポンッと手のひらからジャガイモを生み出した俺は、それを何個か机の上に並べていく。

「ジャガイモ料理なら自炊していた時にも何度か作ってたし、上手く作れるだろう。問題は、ジャガイモ以外の材料がどれくらいあるかってことなんだけど……」

 ざっと厨房を見渡してみた感じ、使えそうな食材はほとんど見当たらない。

 野菜っぽいものがいくつか目につくのだけど、さすが異世界と言ったところか日本では見たこともないような見た目をしたものばかりだ。

 さすがにそれらを勘とノリで使うわけにもいかないし、そうなると使えるのは目の前にあるジャガイモのみ。

「焼くか、茹でるか、それとも揚げるか……? 油の準備も面倒だし、今日は焼き料理にするか」

 幸いなことに必要な調味料は揃っているし、これだけあればアレが作れそうだ。

「そうと決まればサクッと作るぞ! まずは、ジャガイモの下準備からだ」

 ナイフを手に取った俺は、まずジャガイモの皮をむいていく。

 普段とは違う方法での皮むきに少し苦労しながらも、しばらくして用意した全てのジャガイモの皮をむくことができた。

 そうなればお次は、そのジャガイモをひとつひとつ千切りにしていく。

 できるだけ均一になるように注意しながら切り続けていると、不意に背後からルチカが声を掛けてきた。

「あれ? なに作ってるの?」

 どうやら手伝いが終わって手持ち無沙汰になったらしく、彼女は興味深そうに俺の手元を覗き込んでくる。

「まぁ、見てなって。すぐにできるから」

 彼女と会話しながら千切りを終えた俺は、そのジャガイモに塩と胡椒を加えてざっくりと混ぜていく。

 適当に混ざったところでフライパンに油を引くと、熱くなった油にジャガイモを入れて平らにととのえる。

 ジュウッと良い音のなるジャガイモをヘラで押し付けながら焼いていき、片面に焼き目が付いたところで油を追加しながらジャガイモをひっくり返す。

「わぁ、なんだか香ばしくて良い匂い……」

 フライパンを覗き込みながらうっとりした表情を浮かべるルチカを尻目に、俺は最後の仕上げへとはいる。

「これに最後は、バターを溶かしてカリカリになるまで焼けば……。よしっ、ジャガイモのガレットの完成だ!」

 フライパンからお皿に移せば、美味しそうな匂いに誘われていつの間にか集まって来ていた子どもたちから歓声が上がった。

「すごい、美味しそう!」

「いいなぁ。私も食べたい……」

 子どもたちは今にも涎を垂らしてしまいそうな表情を浮かべていて、そんな彼らの姿に俺は思わず笑顔を零した。

「ちゃんと人数分作るから、安心して待っててくれ。ルチカとマローネは、悪いけど手伝ってくれるか?」

「はーい! 任された!」

「ええ、もちろんです」

 待ちきれない様子の子どもたちを宥めながら、俺たちは三人で人数分のガレットを焼いていくのだった。

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俺の異世界イモ無双 ~手からイモを出す能力って、そんなのアリですか?~ 樋川カイト @mozu241

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