第22話

 年甲斐もなく女の子に見惚れてしまった自分を誤魔化すように、俺はわざとらしく大きな声を上げる。

「よしっ! それじゃあ俺も、シスターやルチカの真似をしてみるか!」


 言いながら盛り上がるマローネたちの元まで歩み寄った俺は、持っていた荷物の中から大量の熊肉を取り出して机に並べる。

 最終的にまるまる一匹分の熊肉が机の上に並び、その壮観な光景に子どもたちは目を丸くして驚いていた。

「これも、みんなで食べてくれ。これだけあれば、全員お腹いっぱい食べられるだろ?」

「これはっ……!? こんなにたくさんのお肉を、それもお客様からなんて……。いただくわけにはいきませんっ」

「いやいや、遠慮しないでくれよ。俺ひとりじゃ、どう頑張っても食べきれなくて腐らせちゃうだけだから。それなら、みんなで美味しく食べた方が熊にとっての供養にもなるからさ」

 遠慮して首を振るマローネを説得するように、俺は彼女に向かって口を開く。

「それは、そうかもしれませんけど……。でも……」

 それでもまだ受け取りを渋る彼女に、俺は少し悪戯っぽく笑いかける。

「それに、俺はお客様じゃなくて居候だよ。だからこれは、家賃の代わりってことで」

「……ふふっ、そうでしたね。ではこれは、ありがたく頂戴いたします」

 俺のその言葉でやっと笑顔を見せたマローネは、深々と頭を下げてお礼をいう。

 それに合わせるようにさっきまで騒いでいた子どもたちも俺に頭を下げてきて、俺の胸はなんだかむず痒いものでいっぱいになってしまう。

「さ、さぁ! それじゃあ早く調理を始めよう! もうお腹が減って、我慢できないよ」

 照れ隠しのようにそう掛け声を上げると、マローネはクスクスと笑いながら子どもたちに指示を出していく。

 その指示に従って子どもたちがそれぞれの持ち場へと散っていった後、そっと俺の近くまで寄ってきたルチカはからかうような笑みを浮かべていた。

「シュージってば、照れてるでしょ?」

「照れてない。それよりほら、俺たちもはやく手伝うぞ」

「ふふっ、はーい。シスター! 私はなにをすればいい?」

「あら、じゃあルチカはあっちの子を手伝ってあげて」

「りょーかいっ」

 そのまま離れていくルチカの背中を見送った後、俺も気合を入れるように息を整える。

「それじゃ、俺もやりますか。って言っても、人手は足りてそうだな」

 わざわざ子どもたちの役割を奪うわけにもいかないし、なら俺は別で一品作る方がよさそうだ。

 というわけで、マローネから許可を貰った俺はみんなから少し離れた場所で調理を始めることにした。

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