第81話 最終回 黄泉の国への侵攻

「ふむふむ、黄泉の国の王とやらは森を不浄のものにしようとしたのじゃな?」


「エルフの女王が言うには」


「天界も清浄システムがおかしくなって汚部屋になってしまった。どうやら、奴は世界を不浄のものにしたいようじゃの」


「女王は黄泉の国の入口がわかると言っていました」


「なんと!それは確かか?」


「(ワテらな、その入口とやらを少しだけ調べてみたんや。邪悪な波動が強烈に漂っていたで。あれは次元のゆらぎを通して黄泉の国とつながってんで)」


「ふーむ。これは黄泉の国に侵攻すべきかの?」


「主神様。私もそう考えます」


「儂にいい考えがある。天宮の宝物庫に邪悪な波動を一気に浄化する魔道具があるのじゃ。それを使えるものは神聖魔法を極めたもの。ティーナ、お前じゃ」


「私が……」


「おまえらを天界から転生・転移させたのは、黄泉の国の攻撃じゃ」


「黄泉の国の?」


「うむ。ただ、黄泉の国のものでは天界の住人の命を奪うことはできない。逆に我々は黄泉の国のものの命を奪うこともできんがの。それで、特にティーナ、今の名前はルシーナじゃったの。それとカルマン、つまりアキラの二人を異世界に転生させたのじゃろう。二人共天界の清浄に関する最重要人物じゃからの」


「では、どうすれば」


「そこでこの魔道具じゃ。黄泉の国を浄化してまいれ。それだけで、奴らはのたうち回ることになる」


「ほお」


「じつはの、遠い遠い昔に似たような事件があっての。そのときに対抗策として作らせたのがこの浄化の魔道具なのじゃ」


「遠い昔なんですか」


「うむ。まだ、この世界が混沌としておる時代での。その事件が起こってから、天界と黄泉の国の2つに分離したのじゃ」


 ◇


「(アキラ、シスター、準備はええか?)」


「おー」「はい」


「(猫どももええな?)」


「ふにゃ!」


「(うーむ、猫どもよ。もう少ししまった声をだしてくれんか)」


「ふぎゃ!」


「(うーむ、まあええか。ほなら、アキラ)」


「じゃあ、次元のゆらぎに突入するぞ」



「うわっ、くさっ」


 車ごと次元のゆらぎに突入すると、

 そのまま、黄泉の国と思われる空間が現れた。

 窓を開けなくてもゴミの臭いがした。

 窓の外は薄暗く、

 赤黒くゴツゴツした岩で覆われている。


「じゃあ、さっそく主神様の魔道具を使いますか」


「ええ、わかりました。でも、車の中で操作しても大丈夫かしら?」


「主神様はむしろ車の中で操作しろ、っておっしゃてましたからね」


 シスターが魔道具に魔力を注入していく。

 魔道具はやがて白く光輝いた。

 すると、ゴミ臭い臭いがどんどんなくなっていく。


「おい、外を見ろよ。薄暗かったのにまるで朝のような光に満ち溢れているぞ」


「(岩にも草がはえてきとるやないか)」


 この間、車を中心にして

 急速に黄泉の国の空間が浄化されていった。


 ◇


「おい、なんだか息苦しくないか?」


「はい、我らが王よ。息苦しく気持ちが悪いです」


「我らが王よ!大変です!黄泉の国がどんどんと浄化してます!」


「は?」


「はっきりとはわかりませんが!例の地上との次元のゆらぎから天空の部隊が侵攻してきている模様!」


「なに、生意気な!迎撃せよ!」


「それが……次元のゆらぎ付近では浄化レベルが非常に高く、もう近づくことができません!」


「ふざけるな!くそっ、誰かなんとかせんか!ううっ」


「ううっ、我らが王よ…息苦しくて体を維持できません…」


 黄泉の国の住民はやがてアメーバのような

 物体に変化していった。


 ◇


「シスター・ティーナよ。よくやった。ここからは儂が引き継ごう」


「あ、主神様。承知しました」



「おい、黄泉の国の王よ。聞いているか」


「……」


「ふふふ、もう知能もなくなったか?まあよい。おまえはさんざん天空や地上に不善をなしてきた。いま、その報いを受けるときがきた」


「……」


「千年の間、煉獄の炎に焼かれる罰を受けるのだ」 


「……!」


「業火に焼かれ、おまえは苦しみぬくことになる。しかし、その苦しみこそがお前を浄化する。魂が真っ白な状態になった時点でおまえは転生することになるのだ」


「……!」


 ああ、嫌そうな波動が激しく伝わってくる。


 ◇


「よし、黄泉の国の沙汰は終わったぞ。では、3人とも。天界に戻ってこい」


「(主神さんよ、ワテは天界に戻らんで。平穏すぎてつまらんよってな。アキラたちはどうする?)」


「主神様。ここに至って、私は記憶が蘇って参りました」


「え、シスター、そうなの?実は僕もかなりの記憶を取り戻してる」


「アキラ様。いいえ、カルマン。私を忘れずに探し出してくれて本当にありがとう」


 シスターの瞳から涙が一筋。


「ああ」


「お互い転生してしまったけれど、できれば転生前をやり直ししたい」


「勿論だよ、ティーナ。でも、それは天界で?それとも地上で?」


「私の今の天職は教会にあります。カルマンが良ければ地上に戻りたいです」


「ああ、僕はどっちでも」


「(元の鞘に収まった、ちゅうやつやな。ほな、教会に帰ろか)」


「うむ、ちょっと待て。そうなると、天空の浄化システムに不安が残る。それと、儂もマ◯ク以外が食べたいんじゃが」


「週末になったらそちらに行きますって。問題ありません」


「そうか。待っておるぞ」


 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■


今回でお話を終了とさせて頂きます。

お読み頂き、誠にありがとうございます。



次作「森のダンジョン食堂~ドラゴン定食始めました」

投稿開始します。よろしくお願いたします。

https://kakuyomu.jp/works/16818093077569801160


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成長するキャンピングカーで異世界横断 ~なぜか日本の外食チェーン店食べ放題 REI KATO @keitakato

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