第3話
「あなたは、誰?」
「私は〇〇。人の言葉でいうところの、死神だ。お前の魂を導きに来た。」
私の意思に反して、まるであらかじめプログラムされていたかのように、口から言葉が出た。
それと同時に、今の自分の状況にも気付いた。視覚、聴覚があり、手足もある。そして、喪服のような黒いスーツに、革で出来た黒い手袋をはめている。これが、死神の格好なのだろうか。
少女は、私の答えを聞いても、何も答えなかった。眉をひそめ、いつのまにか部屋の反対側まで移動している。そして、何も反応しなくなった。完全にフリーズしている。
考えられる理由はいくつかある。まずは、私が壁を通り抜けて現れたこと。そして、私が死神だと名乗ったこと。考え出したらきりがない。
もし仮に私が死神ならば、この少女はもうすぐ死ぬのだろう。
ならば考えられる私の仕事は一つだけだ。
私は自分の仕事をしようとした。魂を刈り、あの世に導く。それだけのことだ。
だが、私の手は動かない。
それだけのことを、私はできないでいた。なぜだ。これは私の仕事のはず。どうすればいいか理解だってしている。だが、俺にはできなかった。
しにがみさん @Kaede0709
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