第6話 チャレンジャーな栄養士

 うちの小学校は給食を作る調理室が併設されていました。昔の地方の小学校はどこも多分同じような感じだったのではないでしょうか。


 そして学校に専属の栄養士さんがいて給食の献立を決めるのですがうちの小学校の栄養士さんはそれはチャレンジャーな人でした。


 ある日のメニューにマカロニグラタンとありました。


 今ではほとんどの日本人が知っているであろうポピュラーな料理ですね。


 しかし当時の田舎の子どもで知っている子はほんの数人という感じでした。


 私の家は貧乏でしたが食に関して父親がこだわりと執着を持っていたので外食をしたり珍しいものをすぐに食卓に取り入れたりしていたのでハイカラなものも知っておりました。


 なので、マカロニグラタンという献立を見たときに、いったいどうやって一人一人の分に焼き目をつけるんだろうかと疑問が湧きました。


 朝から謎を抱えたまま給食の時間になり、大きな寸胴鍋にいっぱい入ったマカロニグラタンが運ばれてきました。


 いつもは汁物やカレーなどが入っているその寸胴にはクリームシチューみたいなものがドロドロに固まっている状態で入っています。


 それを一人ずつ皿に盛っていき、案の定そのまま食べることになりました。


 普通なら耐熱容器に入れたそれにチーズとバターを乗せてオーブンでこんがり焼くはずのものをそのままです。


 想像通りの味がしました。オーブンで仕上げる前の中途半端な味と食感。


 塩コショウの味もなく小麦粉のぼったりした硬いクリームに少しのマカロニ、一口食べて、本当に申し訳ないのですが喉を通りませんでした。


 私が口を押えていると隣の男子から「〇〇、吐くなよ」って先に言われてしまい、私は鼻をつまんで牛乳で流し込みました。


 私は久々に給食で泣きました。


 その後は食べられないその皿を前にお昼休みをずっと教室の後ろで一人シクシク泣きながら少しずつ口に入れてはオエっとえづいて涙を流す。


 私はこの時ほど献立を考えた人を恨んだことがありません。


 田舎の小学生にハイカラなものを食べさせたいと思ったのでしょうか、それともちょっとやってみたかったとか思ったのでしょうか。


 その後でてきたクリームコロッケの中身がこれと一緒だったのを私は知っている。絶対にあれのアレンジに違いない。もしかして残っていたのを使いまわしたんじゃないだろうか。


 だって給食にクリームコロッケなんて面倒な物を出すわけないですからね、ほんと今考えると何でもアリな給食室でした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

確かに私が悪いけど 日間田葉(ひまだ よう) @himadayo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ