第5話 可愛い嘘

 同じクラスのHちゃんはM君の事が大好きでした。


 小柄なM君はとても面白い子で人を笑わせるのが得意な人気者です。一方Hちゃんはクラスで2番目に大きいお転婆な女の子でほんの少し乱暴で嘘つきでした。


 他の男子と殴り合いの喧嘩になることもしばしばありましたが戦況が不利になると「女の子に暴力を振るうなんて最低!」と言って泣き出します。


 泣いていると可愛そうなので女子はHちゃんの味方にまわります。喧嘩相手の男子はその理不尽に毎回涙をのみますが決着が決まっているのだから最初から喧嘩をしなければいい話なのでお互い様という感じにおさまります。


 さてHちゃんですがM君の前では乙女になるので大変分かりやすいです。みんなもう分かってるんですがあえて揶揄ったりはしません。


 今日もHちゃんはM君の気を引きたくて嘘をつきます。


「今日うちに仮面〇イダーが来ている」とそれは真面目な顔でM君に言いました。


「またこいつ変なことを言い出したぞ」と、ある男子が言いますが新手の嘘にまわりの子ども達がざわつきました。人気ヒーローの名前が出たので嘘だと思いながらも興味を抱いた子がいてもおかしくありません。


「見せてあげるから帰りにうちに来て」とHちゃんはまわりも気にせずM君を誘いますが誘われた本人は全然乗り気ではないので嫌がって返事もしません。そこで出てきたのがÝ君です。


「Mは俺が連れて行くからお前は先に帰れよ」とHちゃんを先に帰らせました。


 Hちゃんが見えなくなったあとでÝ君が「よし、みんなで見に行くぞ」とM君をはじめそこにいた何人かを誘います。M君も一人ではないのでいいと思ったのか頷いていました。そして私も仮面〇イダーが好きだったのでついていきました。


 Hちゃんの家は小学校からそれほど遠くないのですぐにつきます。


 ピンポーン


「おう、見に来たぞー」とÝ君が玄関で叫びました。


 Hちゃんは可愛いワンピースに着替えていましたが玄関に4~5人の同級生がいるのを見て顔をしかめました。


 そんなHちゃんの顔も気にしないÝ君は「仮面〇イダーに会わせろよ」と家の中に入ろうとします。


 Hちゃんは持ち前の腕力でÝ君を押しやりながら


「仮面〇イダーは熱が出て寝てるから出てこれない」と言ってピシャリと戸を閉めました。


 Ý君は「仮面〇イダーも熱出すんだな」と言って納得していました。


 だからÝ君そうじゃない。それは嘘なんだよとみんなの心が一致した瞬間でした。


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