2.彼の犬
受験勉強の合間に窓から外を覗くと、彼の姿が見えた。長い髪で顔がよく見えなかったけど、なんとなくそう思った。
小学校に入るまでは彼とよく遊んでいたが、クラスが分かれて話したり遊んだりする事は少なくなった。けれど、2年生になるまではときどき彼の家でゲームをして遊んだ覚えはある。
2年生になって同じクラスになった時、彼の雰囲気が教室にいる時と、一緒に遊んでいる時で大きく違っていることに驚いた。
その理由はすぐに分かった。彼はいじめられていた。
私は学校にいる彼に話しかけることが出来なかった。
次の日の朝、玄関先で彼に会った。今日の放課後にゲームやりに家に行ってもいいかと、彼に尋ねたが返事はなく帽子を深く被り、走り去ってしまった。
私はあの日の放課後に無理にでも彼の家に行くべきだったと今は思う。
それから、私は彼を見るのが辛くなって、視界に入らないように避けるようになって、ふと気づいたときには、彼はもう学校に来ていなかった。
窓から見える彼は、私の家の前で立ち止まり、玄関先をじっと見つめていた。そして、玄関の方に向かって歩き始めた。
彼は玄関先に出していたゴミ袋に手を伸ばして漁り始め、私の捨てた犬のぬいぐるみを持って家に帰った。
だが、不思議と不快感はなかった。
あるべき場所に戻ったような。
そういえば、捨てた時もほっとした気持ちになった。
シロをよろしくね。
私はチョコレートを口に入れ、勉強を再開した。
僕の犬 動木縷々 @yurugiruru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます