第3話

ユウの話は信じがたい、というか現実離れし過ぎていて、理解に苦しむ。


でも私は昨日から、もう十分信じられない光景を目の当たりにしてきた。


まるで世界からドッキリを仕掛けられたようだった。


だからもう、あまり驚きはしないし、ユウの話も信じることにした。


それにもう、信じるしかない。


「アダムに該当する人間はいません。


イブと言っても、人間を増やしていく必要はないのです。」


そう言いながら、見たことがない端末を渡してきた。


「もうすぐライフラインは全て止まります。


もうそれを動かす人間がいませんからね。


あなたはこれから、この世界を再構築していくわけですが、


土地から全てというわけではありません。これを見て下さい。


現在の地球の全体像です。」


端末には地球のような物が写っていた。


私は宇宙から地球を実際に見た事はないけど、


知っている地球とはかけ離れている。


「これ、地球…?丸いところ以外、全然違うと思うけど。


この緑の部分が大陸よね、全部でどのくらいの面積があるの?」


「全部で、元の日本より狭いですよ。


審判により地球は小さくなって、ほとんどの大陸は海の底に沈みました。


今はあなたがいるこの大陸だけです。」


日本の形も残っていない、すべての大陸がバラバラになって一つになったようだ。


「窓の外をご覧いただければ…。」


カーテンを開けて、私は外を見た。


絶句。


その言葉が今の状況に1番合うだろう。


この家は高台にあり、元から外の景色は遠くまで見渡せていた。


だが次元が違う。昨日は全くそれどころではなく


気が付かなかったが、300キロは海から離れていたのに


陸の端から雄大に広がる海が見えていた。


地平線の先には陸の端が見える。どれほどの狭さなのか、よく分かった。


「あ、あの…。これって…。もうどうすれ


ばいいのか…。訳がわからないわ。」


落ち着いて、私は話を続けた。


「ユウさん、他の生き残りは別の星にと言っていたけど、どういう事?


みんな同じ場所にいるの?」


「別の星、とは言いましたがちょっと違います。


異世界に飛ばされました。地球と同じような場所ですが、


魔法が使えたり自由に空を飛べたり、ゲームのような場所と言えば


分かりやすいですかね。」


あぁ、なんてファンタジーな話なのだろう。


それが本当なら、私もそちらに飛ばして欲しかった。


「なぜ私が選ばれたの?」


「それは後々、お教えします。


神があなたに求めているのは、その異世界の文明を地球に導入してもらう事。


この宇宙の数々の星は、地球と同じように人間が存在していましたが、


どれも滅んでしまいました。そこで数万年前に神は異世界を作り、


全く新しい文明を作るようにしたのです。


いわば実験ですね。宇宙の生命を、長続きさせ輪廻転生を繰り返す


星を作りたい神は、なんとしても『滅ばない星』を作りたかった。


でも神は直接人類に手を加える事はできず、


新しくフィールドを作ることしかできない。


それで初めて成功したのが異世界の星だった。


その星は数万年前から今までずっと、滅びる事なく維持し続けている。


戦争などの争いはあるけれど、直接滅びに繋がる事態にはならず、


自然も綺麗なまま維持できています。」


「…。話が大きすぎて…。まず私は魔法とか使えないし、というかそもそも


なぜ私1人?その異世界の人間をこちらに寄越せばいいでしょう?」


「神は新しい文明同士の接触により、異世界の星の良い均衡が崩れるのを


恐れました。たくさんの星に数名ずつ振り分け、


その星に順応させるために力を与えています。


転移の際に1人ずつ、直接神と話して加護を授けその人に合う星へと


散りばめました。ですので聖良さんのご家族はみんな一緒です。」


「彼氏は、隆太は?」


「どうでしょうか。そこまでは…。」


「私、よくわかりました。言う通りにしますし自体も大体飲み込みました。


でも1人では無理です。」


「隆太を、ここに連れ戻せませんか?」


ユウは少し考えた後、背中の翼を広げた。


「神に交渉してみます。少しお待ちを。」


そう言うと、窓から飛び立っていった。神はやっぱり、空の上にいるのだろうか。







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神になるか ろみみん @romiosan

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