第25話 蛹

「お、こんなのがあった。」

「なになに?」


街を観光した日の翌日、僕たちはギルドでクエストボードを見ていた。


「メガキャタピラー(3〜5メートルの芋虫)の討伐クエスト。こいつ強さの割に報酬がでかいらしいよ。」

「へぇー。なんで?」

「幼虫の頃は強くないし蛹の頃も強くないけど成虫になったらそれなりに強いらしい。確かBランク下位ぐらいだったかな?」

「下位って呼ばれるとあれだけど十二分に強いね。」

「だからこそ報酬が高い。今まで残ってたのが奇跡だよ。」


すぐに受付に持っていき、クエストを受注する。

メガキャタピラーはDランクの強さだがBランクレベルの報酬が出る。

それだけこの魔物が育つと厄介ということだ。


「場所は…ちょっと遠いね。ここから徒歩半日だ。すぐ近くに村があるから泊まらせてもらおう。」


僕らはこの日、携帯食料などの野営セットを一応買い集めた。

あって困るものでもないし、次も使うだろうからな。


__________


翌日、僕らは依頼者でもある村に向かって出発した。

徒歩で半日とか言ったけど、


「僕らにはコレ魔壁があったなぁ…」

「早くつく分には問題ないよ!着いたら時間があるから村の周りの魔物を倒そう!」


魔壁軽トラモードですぐさま到着してしまった。

村の柵手前で降りると、驚いた表情で固まっている青年に話しかける。


「冒険者をやっているグラドです。メガキャタピラーの討伐クエストのためにやってきました。」

「同じく冒険者のシフォンです!」


青年は微動だにしない。


「……おーい。」

「はっ!?あ、ああ冒険者さん!ようこそクル村へ!」

「いきなりですがその魔物がどのあたりで見つかったかご存知ですか?」

「も、もちろんだとも。えーと確か…あっちの方向だ!」


青年は北西の方を指さした。


「そうですか。ありがとうございます!」


お礼をいい、村の外側を回って北西へと向かう。

しばらく歩きながら周囲を観察するが、野生動物しかいない。


「平和なところだね。」

「うん。この近辺は出てもスライムとゴブリンがちょっとだったかな?動物も賢いらしくてゴブリンはすぐに死ぬらしいけど。」


そんな平和な地区だから柵だけで村が形を保ててるんだろうな…


「あ。」

「どうしたの?」

「やばいかも。自然にメガキャタピラーを止めたり殺せるやつがこの近辺にはいないってことはさっさと成長してる可能性があるってことだよ!」

「最悪の場合もう蛹ってこと?」

「本当に最悪なら蝶になりかけてるかもしれない!だいたい一ヶ月前の依頼だからあるかもしれないし!」


歩いてなんかいられない!

魔壁を地面に展開、そして高度を上げていき空から標的を探す。

川のほとり、木にくっついて蛹になっているそいつがいた。

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無個性男、無属性に転生する。 レモンの幹 @333955515

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