読者を非日常へ無理やり引きずりこむ作品

私たちが暮らす日常には、『不気味』というものが潜んでいることを改めて認識させられる作品。

幽霊を目撃した人や奇妙な体験をした方たちは、必ず口をそろえて「まるでラジオの周波数が合うような感覚でふと、日常から非日常へと引きずりこまれる」と語るが、それはあながち嘘ではないのかもしれない。

もしこの作品を外出先で読んだら、私はおそらく一人で帰宅するのが嫌になっただろう。また描写が非常に美しく、思い描きたくないのにそのシーンが頭の中に次々と鮮明に浮かび上がる。

まるで読者である自分自身も鯨幕を見てしまったかのように。