第7話 修羅場の前の静けさ

ここは駅近くのクリニック。

今日から登校日だけど薫先輩との約束で背中の症状を見にここに来ていた。

薫先輩の言ってた通り朝になってたら赤く腫れていたけど、見た目ほど痛みは無かった。


「まぁ、軽い打撲だね……一週間もすれば治るから三日分の湿布薬出しておくね」


「ありがとうございます」


「はーい、お大事にー」


出してもらった処方箋を出して貰い、クリニック近くの薬局で湿布薬を処方してもらった。

会計を済ませて外に出た時にスマホに通知が入った。


どうやら白川からメッセージが送られてきたみたいだ。

開いてみるとそこには_______


『カイ君、私がいない間に何があったの? 後で話聞かせてもらうから!』


あれ?何か怒ってね?

俺何か怒らせるような事したか……?

良くわからないけど会ったら取り敢えず謝ろう…うん

俺は少しの不安を抱えながら学校へ向かうために歩き出したその時。


「おはよう、海斗くん」


眼の前には何故か薫先輩が立っていた。


「薫先輩?何でここにいるんだ?」


「君がちゃんと約束を守ってるか様子を見に来たんだ」


彼女は紫の風呂敷包まれた荷物を両手で持ちながら、照れくさそうに微笑んだ。


「心配をかけたみたいだな…一応、湿布貼って一週間もすれば治るらしいぞ」


「そ、そうか…まったく君という奴は…」


少し怒ったような顔をしていても、優しさを滲ませる声がどうしても可愛く思えてしまう。


「悪かったって…こうして約束を守ってるんだから良いだろ?それより、その荷物はなんだ?」


「これかっ…?実は君にお弁当を作ってきたんだ…」


少し照れくさそうにしながら紫の風呂敷を俺の前に差し出してきた。

その様子はどう見ても恋をしている乙女だった。

俺じゃなかったら勘違いをしていることだろう。

先輩のことだから、きっと昨日のお礼に作ってくれたと予想ができる。

だけど、不意にお弁当を差し出された俺は少しばかり呆気に取られていた。


「…………」


「何か言ってくれないか!?それとも迷惑だったか…?」


薫先輩は涙ぐみながら上目遣いでお弁当の入った風呂敷を抱きしめる。


「いきなりだったから驚いただけだ…わざわざありがとな」


こうして誰かに弁当を作ってもらえるなんて小学生以来久しぶりで、素直に嬉しかった。

それが顔に出ていたんだろう。

先輩が嬉しいそうに微笑みながら俺にお弁当を手渡した。


「ありがたく頂くよ」


「ふふっ…そうか、喜んでくれたなら嬉しい」


「おう、そんじゃ学校に行こうぜ」


そうして、俺は先輩と話しながら学校に向かう事にした。




「あっ、そういえば、弁当に何が入ってるんだ?」


「ナイショだ!でも変なものは入れてないから安心して欲しい」


「えぇ…逆に心配なんだが…?」


「何故だ!?失礼だな君は…これでもお母様に料理の腕はお墨付きを貰ってるんだぞ?」


「へぇ…じゃあ楽しみにしとくわ」


**********************


学校についた俺達はそれぞれ別の教室に向かった。


それにしても、さっきの白川のメールは何だったんだ?

一抹の不安を抱えながら俺は教室の扉に手をかけて開けた。


「カイ君!!」


「うおっ!いきなり危ねえだろうが!」


扉を開けた瞬間に白川が凄い勢いで抱きついてきた。


「えへへ…」


「いや、えへへじゃなくて…」


ぎゅっと両腕でガッシリ抱きつかれているからか俺は動けずにいた。

それに、さっきから胸に鼻を当ててずっと匂いを嗅いでくる。


「はぁ、はぁ…久しぶりのカイ君だぁ…えへっ、えへへ」


「あの白川さんや、俺早く座りたいだけど…」


「えぇ…もうちょっとだけっ!ね?良いでしょう?」


そんな可愛くお願いされても困るんだが…

それに、周りの視線が突き刺さって、色々怖いんだけど。


「良くねぇわ!お願いだから一旦離れてくれませんかね?」


渋々俺から離れて不満そうに俺を睨みつける。


「むぅ…じゃあ昼休みに甘えさせてよね!」


「はいはい、じゃあまた後でなー」


自分の机に向かって歩き出そうとした瞬間、少し背中がヒヤッとした目線を感じた。


「カイ君…その風呂敷は……なに?」


「うん?弁当だけど」


「え?カイ君は料理なんて出来ないのになんでお弁当なんて持ってきてるの?誰かに作って貰ったの?誰?私の知ってる人?ねぇ、その人とどういう関係なの?女の子じゃないよね?…あれ、おかしいよね?あっ、今日、部屋に居なかったのもその人といたから?もしかして浮気?私がいなかった間に可愛い後輩ちゃんと仲良くしてたんだよね?私、知ってるよ?今日カイ君を探しに来てたもん…」


瞳のハイライトが消えて真っすぐ俺を見つめてくる。


……怖っ!

え?

白川さん?

怖いんですけど…

それに後輩ってもしかして花宮のことか?

それよりも先ずは白川を止めないとな…


「ひとまず落ち着けっ」


チョップで白川の頭を小突く。


「あ痛っ…カイ君酷いよー!」


「お前が変な方向に暴走するからだろ?それに後で説明するから一旦席に戻れ」


「うぅ……分かったよぉ」


俺はため息をつきながら風呂敷を教室の俺のロッカーに入れた。


____________________________________________________________



更新がめっちゃ遅くなってすみません……


仕事が繁忙期に入っちゃって小説を書く気力が持ってかれてました。


少し落ち着いて来たので、三日に一話ずつ更新できたらと思います!

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【初恋の女の子と再会してから何故か学校のアイドル達が迫ってきますっ!】〜エロゲーヒロインは愛されたいっ!〜 Re:未定ション @reiria

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