それでも、時計の針は(2)

 ――それから、少しあとのこと。


 遠く離れた、とある浜辺で、ふたりの姉妹が遊んでいる。

 浜辺には、波に乗っていろいろな宝物が流れ着く。海から。遠くの岸から。あるいは、から。

 ふたりはそれを集めて遊んでいる。

 姉が、木の棒を砂に立てて、くるくる回しながら、ぱっと離す。

 棒の倒れたほうに、妹が飛んでいく。砂浜をじっと探すと、光るものが見つかる。

 それは、銀色の歯車だ。

 妹は見つけた宝物を、姉のバケツにいれる。そこにはたくさんのバネと、歯車と、姉妹には読めない文字の書かれた金属の板と、ねじ曲がった金色のフタが入っている。

 今度は妹が棒を倒す番だ。くるくる回して手を離すと、まるでコンパスの針みたいに、木の棒はぴたりとある方向をさして止まる。その先には、また別の宝物がある。

 きゃっきゃと笑いながら、姉妹が走る。バケツの中でかちかちと歯車がぶつかり合う。

 その音に混じって、誰かのしのび笑いが聞こえてくる。


 クス。


 クスクス。


 クスクスクスクス――。




【呪いのメイズさん――終】

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呪いのメイズさん 小金井ゴル @KoganeiGol

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